1.事業の背景
(1)大規模稲作経営体では、規模拡大や複合経営に伴い、ほ場毎やその年の気象にあった作物栽培環境の把握や情報管理が難しくなってきている。また、農作業は経験値に頼った管理が主であり、情報共有や後継者育成が困難な状況にある。そのため、農業分野でも、営農管理支援ツールとしてICTの導入が進んでおり、特に、会社経営体では、「ほ場ごとの管理を見える化し、省力化するのための遠隔で測定するリモートセンシング技術(ドローン等、水位センサー)や機器等を導入する必要性を感じている」との要望がある。
(2)営農の「見える化」として現在、鳥取県内全域を1km四方に区切った農業気象データを水稲の刈取適期判定に活用し、農試ホームページで指導機関へ情報提供を行っている。しかしながら、標高差の大きい山間地ではデータの誤差が大きいため、山間地での精度向上を指導機関等から求められている。
(3)病害虫の発生と気象条件とは関係が深く、農業気象データを用いて病害虫の発生を予測することを期待されている。特に、有機・特別栽培では適期対策を実施する上で、必要不可欠である。
2.事業の目的
ICT機器等を取り入れることにより、営農技術の「見える化」、作業効率向上、コスト低減を図り、経験値や勘ではなく、データやマニュアルに基づいた営農を実施することで技術の高位平準化を目指す。
3.事業の内容
(1)農業気象データを活用した営農管理の「見える化」等の検討
1)生育予測技術を用いた水稲、野菜栽培における適期作業予測技術の確立を図る
2)山間地におけるメッシュ農業気象データの適応性向上を図る
3)病害虫被害回避を目指した農業気象データ利用について検討する
(2)遠隔で測定するリモートセンシング技術の導入検討
1)ほ場ごとの情報管理と営農の省力化のため、ドローン等を用いた営農技術を大規模稲作経営体と協働で検証する
2)水管理の省力化のため、ほ場の入水状況を水位センサー等により簡易に把握できる方法について、大規模稲作経営体と協働で有用性を検証する
(3)将来の技術革新に対応するため、研究機関等の技術データ収集と蓄積を推進
1)これまでの成果情報、水稲病害虫・雑草の画像、農作業の動画等について、技術情報の提供と技術継承への活用が容易に行えるよう整理、データベース化する
4.事業の効果
(1)大規模農家、営農組織における水稲、野菜栽培管理(適期施肥、防除、収穫)での作業効率の向上と収量アップ、人件費等のコスト低減につながる。
(2)水稲病害虫の発生予測、発生地帯マップ作成により病害虫被害リスク低減を進め、高品質農産物の安定供給が可能となる。
(3)ICT機器等を取り入れることにより、営農技術の「見える化」が図られ、経験値や勘ではなく、データやマニュアルに基づいた営農が可能となり、技術の高位平準化へつなげることができる。
(4)営農技術の「見える化」によるマニュアル化や省力化を進めることで、新規就農等の後継者育成にも貢献できる。
5.事業期間及び年次計画
事業期間 平成30年〜32年(3年間)
| H30 | H31年 | H32 |
1.農業気象データを活用した営農管理の「見える化」等の検討 | | | |
1)生育予測技術を用いた水稲、野菜栽培における適期作業予測技術の確立 | ○ | ○ | ○ |
2)山間地におけるメッシュ農業気象データの適応性向上 | ○ | ○ | ○ |
3)病害虫被害回避を目指した農業気象データ利用 | ○ | ○ | ○ |
2.リモートセンシング技術の導入検討 | | | |
1)ドローン等を用いた営農技術の検証 | ○ | ○ | ○ |
2)水管理の省力化を目指した水位センサー等による方法について検証 | ○ | ○ | ○ |
3.将来の技術革新に対応するため、研究機関等の技術データ収集と蓄積を推進 | ○ | ○ | ○ |
6.「鳥取県農業活力増進プラン」における位置づけ
・水田フル活用による農業所得の向上