概略説明
園芸試験場が開発した‘ねばりっ娘’および在来ナガイモは県中部を代表する「鳥取ブランド」の特産品である。しかし、生産者から以前と比べてナガイモが作りにくくなってきたとの声があり、事実‘ねばりっ娘’・在来ナガイモともに品質の低下が近年問題になっている。また高齢化等により生産量も伸び悩んでいる。県外からの需要も多く、儲かる品目として農家の生産意欲も高い‘ねばりっ娘’を核に置き、鳥取県のナガイモ産地を盛り立て、ブランド力強化のための技術確立を行う。
事業の必要性
(1)‘ねばりっ娘’は本県育成の品種であり、本県以外での試験は行われていない。これまでの試験により明らかになった‘ねばりっ娘’の栽培特性をいかし、より効率的な‘ねばりっ娘’の栽培法を確立することは、‘ねばりっ娘’の栽培面積拡大のために急務である。また、近年問題になってきている‘ねばりっ娘’特有の生理障害(縦割れ症)低減技術の確立が求められている。
(2)‘ねばりっ娘’・在来ナガイモともに生産量低下の大きな原因となっている黒陥没症の原因究明および対策法の確立が求められている。
(3)夏季の高温・ゲリラ豪雨等の気象変動により、形状の悪い芋が増え在来ナガイモの秀品率の低下を招いている。
(4)砂丘地で栽培している‘ねばりっ娘’・在来ナガイモは施肥量が多く、地下水への肥料成分の溶脱も多い。自然環境にやさしい農業が注目されている中、環境に配慮した施肥法の開発が求められている。
(5)事業の対象者:県内生産者150戸およびナガイモを購入する消費者。
事業の内容
(1)‘ねばりっ娘’専用栽培技術の確立
・施肥の検討
・縦割れ症の原因究明
・センチュウ対策
・‘ねばりっ娘’専用栽培指針の作成
(2)黒陥没対策技術の確立
・黒陥没症の原因究明
・黒陥没症発生低減技術の開発
(3)在来ナガイモの生産安定技術の確立
・系統の選抜
・形状のよくなる栽培管理の開発
(4)環境負荷に配慮した施肥法の開発
・簡易ライシメーターを用いた窒素・リン酸溶脱量の測定
事業の効果
(1)効率的な‘ねばりっ娘’栽培により栽培面積が増大する。
(2)黒陥没症の被害が少なくなり、‘ねばりっ娘’・在来ナガイモともに生産量が増大する。
(3)在来ナガイモの生産安定技術の確立により、秀品率が上昇し農家所得が向上する。
(4)環境に配慮した施肥法の確立により、無駄な施肥を防ぎ生産コストを削減できる。また、消費者の食への安心・安全志向に合致した「選ばれる産地」になる。
これまでの成果
(1)‘ねばりっ娘’の頂芽と小芋のそれぞれ50g以上を用いることで安定して1kg以上の成芋を育成できることが明らかになった。
(2)‘ねばりっ娘’は在来ナガイモと比較して出芽が1ヶ月早く、また地上部の枯れ上がりが遅いが、アクは早く消失する特性が認められた。
(3)黒陥没症の発生は施肥量が多いと発生が増加する傾向が見られた。また、土壌中の水分とも関係があり、多肥量・無かん水区で発生が増加する傾向が見られた。
(4)ナガイモ栽培において、生育後半の減肥は芋重および品質に影響しないことが判り、施肥量を1割〜2割減できることが明らかになった。
平成30年の試験内容
(1)‘ねばりっ娘’専用栽培技術の確立
・施肥の検討
・縦割れ症の原因究明
(2)黒陥没対策技術の確立
・黒陥没症の原因究明
・黒陥没症の発生低減技術の検討
(3)在来ナガイモ生産安定技術の確立
・系統選抜
・形状の良くなる栽培管理の開発
(4)環境に配慮した施肥法の開発
・簡易ライシメーターを用いた窒素・リン酸溶脱量の測定
平成30年度要求内訳(単位:千円)
内訳 | 要求額(千円) |
現地試験栽培管理委託費 | 453 |
ナガイモ栽培用資材・分析用試薬購入費 | 2,003 |
学会・研修会への出席旅費 | 150 |
ナガイモ深耕機賃借料 | 60 |
パワーショベル賃借料 | 155 |
合計 | 2,821 |
年度別試験内容と事業費(千円)
年度 | 事業費 | 事業内容 |
28 | 3,000 | ・‘ねばりっ娘’専用施肥の検討、縦割れ症の原因究明、センチュウ防除対策
・黒陥没症の発生原因究明
・在来ナガイモ生産安定のための系統選抜、形状の良くなる栽培管理の開発
・環境に配慮した施肥法開発のための簡易ライシメーターを用いた窒素・リン酸溶脱量の測定 |
29 | 3,000 | ・‘ねばりっ娘’専用施肥の検討、縦割れ症の原因究明、センチュウ防除対策
・黒陥没症の発生原因究明
・在来ナガイモ生産安定のための系統選抜、形状の良くなる栽培管理の開発
・環境に配慮した施肥法開発のための簡易ライシメーターを用いた窒素・リン酸溶脱量の測定 |
30 | 2,821 | ・‘ねばりっ娘’専用施肥の検討、縦割れ症の原因究明
・黒陥没症の発生低減技術の開発
・在来ナガイモ生産安定のための系統選抜、形状の良くなる栽培管理の開発
・環境に配慮した施肥法開発のための簡易ライシメーターを用いた窒素・リン酸溶脱量の測定 |
31 | 2,821 | ・‘ねばりっ娘’専用施肥の検討
・黒陥没症の発生低減技術の開発
・在来ナガイモ生産安定のための形状の良くなる栽培管理法の開発
・環境に配慮した施肥法開発のための簡易ライシメーターを用いた窒素・リン酸溶脱量の測定 |
32 | 2,821 | ・‘ねばりっ娘’専用施肥の検討、‘ねばりっ娘’専用栽培指針の作成
・黒陥没症の発生低減技術の開発
・在来ナガイモ生産安定のための形状の良くなる栽培管理法の開発
・環境に配慮した施肥法開発のための簡易ライシメーターを用いた窒素・リン酸溶脱量の測定 |
合計 | 14,463 | |
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
・‘ねばりっ娘’は在来ナガイモと比較して出芽が1カ月早く、地上部の枯れ上がりが遅いが、アクは早く消失する特性が見られた。
・‘ねばりっ娘’の頂芽と小芋のそれぞれ50g以上を用いることで安定して1kg以上の成芋を育成できることが明らかになった。
・黒陥没症の発生は施肥量が多いと発生が増加する傾向が見られた。また、土壌中の水分とも関係があり、多肥量・無かん水区で発生が増加する傾向が見られた。
・ナガイモ栽培において、生育後半の施肥は流亡が多かった。
・生育後半の減肥は芋重および品質に影響しないことが判り、施肥量を1割〜2割減できることが明らかになった。
これまでの取組に対する評価
平成27年度 外部評価委員会議(事前評価)の結果
評点 12.1 判定 ◎
(評点9以上で試験実施)
評価委員の主な意見
・鳥取のブランドとして生産性向上に向けての課題が明確となっているので、成果が期待できる。
・近年の異常気象の影響も考えられるので、緊急性は高いと思われる。
〈自己分析〉
鳥取オリジナル品種‘ねばりっ娘’の栽培法を早期に確立するとともに、ナガイモ産地が抱える栽培に関する課題を解決し、より産地が発展していくための支援を行っていきたい。