○かつて山そのものが「御神体」として崇められ、手を加えられることなく維持されて続けてきたブナ林に代表される大山山麓の自然環境は、豊かな土壌と清らかな水を育み、「山・里・海」の連環を通じて農産物、海産物をはじめとする様々な恵みをこの地域にもたらし、これらを背景に豊かな歴史、文化などが蓄積されてきた。
○一方、高度経済成長期以降に急拡大した経済活動が自然環境への負荷を増大させ、環境破壊・汚染の懸念が生じ、その対策を迫られる状況下で、一度は失われた『自然との共生』を、人間の意志によって再生し、連環を再び取り戻そうとする様々な取組みが絶えることなく行われてきている。
(例)
・中海アダプトプログラム:昭和30年代以降、開発で水質悪化した中海を「泳げる中海」にしようと住民、地元企業、行政が協働して清掃活動を実施。
・とっとり共生の森及びとっとり共生の里:大山を取水地としている飲料メーカーが、森林保全活動を行うほか、地元住民とともに遊休農地を再生し、ソバを育成。土壌保全活動のほか農業・農村の活性化を図っている。
・自然循環型農業:ラムサール条約湿地に登録されている中海で水質汚染を防ぐために定期的に除去されている海藻を堆肥として有効利用し、海のめぐみを大地へと活用し米を栽培。
○こうした自然を愛する人々の取り組みの代表例として挙げられるのが、30年前から先進的に大山で取り組まれている『一木一石運動』に象徴される山を守る活動である。山頂が裸地化し、崩壊の危機が迫ったにも関わらず、この運動により山頂に緑がよみがえったことは全国に誇るべきことである。
大山山麓の地が、昭和41年に自然保護の国民的指標である「自然保護憲章」の早期制定を求めた国立公園全国大会の開催地であり、また「自然保護憲章発祥の地」として自然を愛する人々にとって『山を守る聖地』でもあることが、これらの活動を継続させる大きな柱となっている。