1 事業概要
◆近年の建設業は、建設投資の減少により受注競争が激化し、厳しい経営環境にあり、技能労働者の賃金低下や社会保険等未加入などの就労環境の悪化により若年入職者の減少が続いており、近い将来、人材不足により、社会資本の維持・更新にも支障を及ぼす恐れがある。
◆なかでも、建設業を下支えしている専門工事業者(とび、鉄筋、 型枠、塗装、大工、内装など)は、主に下請工事を担う弱い立場にあり若手入職者の確保や育成が一層困難であることから、これを解決するための取組を実施する。
2 事業内容
下請契約が適正な価格で行われているかを確認し、適正でないと判断される契約については、元請又は下請に必要な助言・指導を行うことにより適正な価格による取引を推進し、もって下請業者に従事する技能労働者の就労環境の改善に資する。
(1) 技能労働者の賃金水準等詳細調査
委託事業により、下請報告書で収集した下請契約額を発注工事設計金額と比較分析し、契約金額の水準を把握する。
また、委託事業で得られた結果に基づき立入調査を実施し、下請に従事する技能労働者の賃金水準を把握する。
<調査工事件数見込み>
・設計金額との比較調査 約80件
・立入調査 約30件
(2) 経理専門家による事実確認
(1)の調査の結果、下請契約額が設計金額の原価相当(直接工事費+法定福利費)を下回る場合は、立入詳細調査を実施する。当該立入調査で2重帳簿等を疑わせるような悪質な事案が発見された場合は、税理士等の専門家に依頼して事実関係を確認し、文書指導等で改善を促す。
3 要求額
(1)賃金水準等詳細調査 4,464千円(4,464千円)
(2)経理専門家による事実確認 100千円(100千円)
合計4,564千円(4,564千円)
4 事業の必要性
(1)元請・下請関係からの必要性
元請と下請では、継続的に工事を発注・受注する関係が通常であるため法は下請保護のための手段を用意しているが、継続的な取引関係に、元請が強く下請が弱い立場になりがちである。
このため、建設業影響することを恐れて、下請が不合理な扱いを受けたとしても当該下請から具体的な訴えを行政庁に行うことは極めて少ない。よって、行政側から取引の実態を調査し、必要な助言・指導等を行い、このことにより取引の適正を推進しようとする当該事業の必要性は高い。
(2)新たに制定した指針の実効性確認に向けた必要性
元請下請関係の適正化や就労環境の改善を図ることによる担い手の確保・育成等に向けて、平成27年3月に「鳥取県建設工事における下請契約等適正化指針」を制定。当該指針には、全ての業者の責務として「適正な価格での下請契約の確保」及び「適切な賃金水準の確保」を規定しており、これらの規定に基づく取引や賃金水準が確保されているか当該事業の実施により継続的に確認する必要性は高い。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
昨年は70の下請工事について県設計書との比較分析を行い、約30社の立入調査を実施し、必要な指導や助言を行った。
これまでの取組に対する評価
約半数の下請工事において、県設計における直接工事費と法定福利費を合算した額を下回る水準であった。また、賃金水準についても県設計の労務単価を大きく下回っているものも見られた。
全ての下請工事の契約金額が設計金額を上回り、このことにより適切な賃金水準の確保されるよう、鳥取県建設工事における下請契約等適正化指針の実効性を確保するとともに、特に専門工事業者等の担い手確保・育成を図るため、当該詳細調査を引き続き実施していく必要がある。