1、背景・目的
平成29年7月の九州北部豪雨や近年の県内における集中豪雨による流木被害を踏まえて、流木による被害の拡大を防ぐため、部局横断的なWGを設置し、今年度、流木による閉塞等の危険度を判定し、ため池、河川、砂防の危険箇所(トラブルスポット)の抽出を行っているところである。
トラブルスポット抽出後は、過去に流木被害が発生するなど重点的な流木対策が必要な代表流域を設定し、流域内における森林での対策、渓流での対策、ダム・ため池での対策、河川での対策の効果を考慮しながら「流域一体となった総合的な流木対策計画」を策定し、効果的に事業を推進することが不可欠である。
さらに、代表流域での効果を検証しながら、他の流域についても被災実績や保全施設の有無など優先順位を考慮しながら、流木対策に取り組む必要がある。
流木は流出土砂や洪水によりもたらされるものであり、既存洪水ハザードマップや土砂災害警戒区域等で示す影響範囲は変わらないものの、橋梁等への閉塞・氾濫という新たな災害形態となるため、同時複層的に発生する閉塞の把握や周辺での災害発生の可能性の周知に加え、下流域への危険情報の伝達といった新しい警戒避難体制の構築(早期危険情報伝達と早期避難等)につなげていくことが重要となる。
2、事業概要
流域一体となった総合的な流木対策検討
代表流域において、流域内の森林、砂防渓流、ダム・ため池それ ぞれの効果が重複しないよう効率的・効果的に組み合わせた「流域一体となった総合的な流木対策計画」を策定する。
これに基づき、水害や土砂災害対策と併せて、ハード・ソフトの流木対策を計画的に推進することにより、流域全体の治水安全度を向上させるとともに、流域住民の早期避難につなげていく。
<流域一体となった総合的な流木対策計画の各対策イメージ>
■ハード対策
・以下に示す対策等の効果が重複することがないよう効率的・ 効果的な計画を作成
(1)間伐等の森林整備による斜面崩壊防止に伴う流木発
生量の抑制
(2)上流保安林内で発生する流木を治山堰堤で補足
(3)治山渓流内で流木化する可能性の高い流路部の立木伐採
(4)斜面崩壊の発生によりイエローゾーン内の砂防渓流に流れ 込む流木を透過型砂防堰堤等で捕捉
(5)砂防堰堤で捕捉できなかったものやイエローゾーン外から ダム・ため池に流れ込む流木を網場などで捕捉
(6)上記施設で捕捉できず河川に流れ込む流木を貯木池など で捕捉
(7)河川・道路整備計画の中での横断構造物(橋梁等)の更新 による閉塞の解消
■ソフト対策
・土砂災害の危険度を示す土砂災害警戒情報や雨量情報、水
位計や監視カメラによる水位上昇情報などを流木被害のトリガ
ー情報(流木被害の発生に備えて警戒を開始するための情報)
とすることとし、対象流域内で同時複層的に発生する閉塞情報
や閉塞箇所周辺および下流域における危険度情報について関
係機関で情報共有し、防災・減災につなげる。
・これらの情報伝達方法、監視体制および防災行動については、
タイムラインとして整理するなど、関係市町村などと連携しなが
ら、流域全体の新しい警戒避難体制の在り方について検討して
いく。
<今後の展開>
(1)代表流域での流域一体となった総合的な流木対策の推進
計画策定後は、過去の流木被害や保全対象の有無などに
よる優先順位を考慮し、短期対策と中長期対策を関係機関が 流木対策WG等で連携しながら推進する。
(短期対策) 早急に対応するべき対策
・流木被害の危険性の高い箇所の河床掘削や河川伐開、早
期効果が期待できる網場補修等の施設整備
(中長期対策) 3〜5年で効果が期待できる対策
・砂防堰堤等
(2)全県の他流域への展開
代表流域における流域一体となった総合的な流木対策計画
策定において得た知見を活用しながら、対策実施後も、その効
果を検証し、全県の他流域への展開を図っていく。
3、要求内容
流域一体となった総合的な流木対策計画検討
C=33,000千円
○流域一体となった総合的な流木対策計画の策定
・県内における重点的な流木対策が必要な代表流域(3流 域)を抽出
・代表流域における森林・砂防渓流・ダム・ため池及び河川 での流木対策の効果検討と効率的・効果的な手法及び施 工順序の検討
・同時複層的に発生する閉塞の把握や周辺での災害発生 の可能性の周知、下流域への危険情報の伝達などの流 域全体の新しい警戒避難体制の検討
うち河川における流木対策検討
○県管理ダムの網場の点検、改修の検討
○貯木池、流木捕捉工等の配置・規模の概略検討
○流域河川内トラブルスポット付近の河川内樹木の伐開及 び異常な堆積土砂撤去に関する効率的な実施計画検討
○監視カメラ等の配置と住民への伝達方法等の概略検討
【期待できる効果】
◆施設整備費の軽減と早期効果の発現
・代表流域における各施設の効果と流木災害抑制のため
の効果的な施設の組み合わせを明らかにすることで、
施設整備費の軽減と早期効果発現が期待できる。
◆効率的な河川管理による治水安全度の向上
・河川管理における河川伐開や河道掘削などの優先順位
が明確となり、効率的に治水安全度を向上することができ
る。
◆市町村におけるより実践的な避難計画の作成
・対策の検討を通じて、各トラブルスポットの優先度が明ら
かになり 市町村において、水害や土砂災害と併せた、よ
り実践的な避難計画が作成できる。
◆流域の危険情報の伝達による新しい避難体制の構築
・流域における危険情報の伝達など、新しい警戒避難体制
の構築により、より早く安全な住民の避難行動が実現でき
る。