(1) 目的 | この条例は、地下水が豊かな自然環境により長期間かけて育まれる貴重な資源であり、県民生活にとって欠くことのできない水道及び農業、工業その他の産業に利用されていることに鑑み、地下水の採取に関し必要な規制等を行うことにより、地下水を将来にわたって持続的に利用できる環境を守り、もって県民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。 |
(2) 定義
| この条例において、次に掲げる用語の意義は、それぞれに定めるところによる。
ア 地下水 自然の循環系の中にある水(温泉を除く。)のうち、地面からの深さに関係なく、地中に存在するものをいう。
イ 揚水設備 動力を用いて地下水を採取するための設備(災害の発生その他の緊急事態に限り利用されるものを除く。)で、揚水機の吐出口の断面積(吐出口が2以上あるときは、その断面積の合計をいう。以下同じ。)が14平方センチメートルを超えるものをいう。
ウ 井戸 揚水設備を用いて地下水を採取するための施設(河川区域内のものを除く。)をいう。
エ 事業者 井戸により採取する地下水を事業に利用する者をいう。
オ 重点保全地域 地下水の採取によって地下水の枯渇、濁水化、塩水化、地盤沈下その他の生活環境に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがある地域として知事が指定する地域をいう。 |
(3) 県の責務
| 県は、市町村と連携し、及び協力して、次に掲げる施策を実施するものとする。
ア 地下水の水質及び水量に関係する水の循環、地質、水脈その他の事項に係る知見の充実を図ること。
イ 水源の涵(かん)養その他の地下水の水質及び水量の保全に資する事業を推進すること。
ウ 事業者及び県民への地下水の利用状況、水位の変動その他の情報を提供すること。
エ 地下水が地域共通の貴重な資源として持続的に利用されなければならないとの意識の高揚を図ること。 |
(4) 事業者の責務
| ア 事業者は、地下水の採取に当たっては、地下水の枯渇、濁水化、塩水化、地盤沈下その他の生活環境に係る被害が生じないよう努めるものとする。
イ 事業者は、地下水の適正な利用に努めるとともに、自ら主体的に水源の涵(かん)養その他地下水の水質及び水量の保全に資する活動の実施に努めるものとする。
ウ 事業者は、県が実施する水源の涵(かん)養その他の地下水の持続的な利用に関する施策について、積極的に協力するものとする。 |
(5) 県民の責務 | ア 県民は、地下水の適正な利用に努めるとともに、自ら主体的にその水質及び水量の保全に資する活動を実施するよう努めるものとする。
イ 県民は、県が実施する水源の涵(かん)養その他の地下水の持続的な利用に関する施策について、積極的に協力するものとする。 |
(6) 影響調査の実施等
| ア 井戸を設置して地下水を採取しようとする者は、地下水の採取が周辺の地下水の水位に及ぼす影響に関する調査(以下「影響調査」という。)を実施しなければならない。井戸から採取する地下水の量を増加しようとする者も、同様とする。
イ 影響調査を実施しようとする者は、影響調査を実施する日の60日前までに、次に掲げる事項を記載した影響調査計画書を知事に届け出なければならない。
(ア) 井戸の位置及び1年間に採取を予定する地下水の量
(イ) 影響調査のために採取する地下水の量及び採取の期間
(ウ) 影響調査を実施する範囲及び方法
(エ) その他規則で定める事項
ウ 知事は、影響調査計画書の届出があったときは、影響調査を実施する範囲及び方法について、地下水を持続的に利用できる環境の保全の見地から意見を述べるものとする。
エ 知事は、ウによる意見を述べるときは、規則で定めるところにより、あらかじめ、鳥取県環境審議会及び影響調査を実施する範囲を管轄する市町村の長の意見を聴くものとする。 |
(7) 採取計画の届出 | ア 井戸により地下水を採取しようとする者は、次に掲げる事項を記載した採取計画を知事に届け出なければならない。井戸から採取する地下水の量を増加しようとする者も、同様とする。
(ア) 井戸の位置及び1年間に採取を予定する地下水の量
(イ) 揚水機の吐出口の断面積その他揚水設備に関する事項
(ウ) 水量測定器又は採取する地下水の量を測定する方法に関する事項
(エ) その他規則で定める事項
イ 採取計画には、影響調査の結果を記載した書類を添付しなければならない。 |
(8) 変更命令
| ア 知事は、(7)アにより届け出られた採取計画に基づく地下水の採取が地下水の水位の低下等により地下水の持続的な利用に支障を生じさせると認めるときは、その届出の日から60日以内に限り、届出事業者に対し当該採取計画を変更するよう命ずることができる。
イ 知事は、(7)アの届出があったときは、アの命令に関し、鳥取県環境審議会及び地下水の水位の変化等が生ずると認められる地域を管轄する市町村の長の意見を聴くものとする。 |
(9) 採取の制限 | ア 届出事業者は、(7)アの届出の日から60日を経過した後でなければ、その届出に係る地下水の採取を開始してはならない。ただし、(8)アの命令を行わない旨の知事からの通知を受けたときは、この限りでない。
イ 届出事業者は、採取計画に従って地下水の採取をしなければならない。 |
(10) 水量測定器の設置、採取量の報告等
| ア 届出事業者は、揚水設備ごとに水量測定器を設置して当該揚水設備により採取した地下水の量(以下「採取量」という。)を測定しなければならない。
イ 水量測定器を設置しないで採取量を把握することについて知事の承認を受けた届出事業者は、知事が別に定める方法により採取量を測定することができる。
ウ 届出事業者は、揚水設備ごとに採取量その他規則で定める事項を帳簿に記載し、その帳簿を5年間保存するとともに、採取量を毎年知事に報告しなければならない。
エ 届出事業者は、規則で定めるところにより、井戸ごとの地下水の水位を観測して帳簿に記載し、その帳簿を5年間保存しなければならない。ただし、井戸の構造上の制約その他のやむを得ない事情により水位の観測が困難な場合は、この限りでない。 |
(11) 立入調査
| ア 知事は、この条例を施行するために必要があると認められる限度において、その職員に届出事業者の事業所等に立ち入り、帳簿書類その他の物件を調査させることができる。この場合において、知事は、あらかじめその旨を事業者に通知しなければならない。
イ 事業所等に立ち入る職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
ウ 立入調査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 |
(12) 措置命令
| ア 知事は、届出事業者が(8)アの命令又は(9)若しくは(14)エに違反した場合において、地下水の持続的な利用に支障が生ずると認めるときは、当該届出事業者に対し、地下水の採取の停止その他の必要な措置を講ずることを命ずることができる。
イ 知事は、届出事業者が(10)アに違反して水量測定器を設置せず、又は同ウに違反して帳簿の記載及び保存を行わず、若しくは採取量の報告を行わないときは、当該届出事業者に対し、水量測定器の設置その他の必要な措置を講ずることを命ずることができる。 |
(13) 重点保全地域の指定
| ア 知事は区域を定めて、重点保全地域を指定することができる。
イ 知事は、重点保全地域を指定しようとするときは、あらかじめ、鳥取県環境審議会及び重点保全地域となる区域を管轄する市町村の長の意見を聴かなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも同様とする。
ウ 知事は、重点保全地域を指定するときは、その旨及びその区域を告示しなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。 |
(14) 採取基準の設定等
| ア 知事は、重点保全地域ごとに地下水の採取の基準(以下「採取基準」という。)を定めるものとする。この場合において、水道事業者及び水道用水供給事業者に対する採取基準については、水道が県民生活に欠くことができないものであることに配慮するものとする。
イ 採取基準は、揚水設備の吐出口の断面積に応じた採取量その他規則で定める事項について定めるものとする。
ウ 採取基準の設定並びにその変更及び廃止については、(13)イ及びウを準用する。
エ 重点保全地域において地下水を採取する者は、採取基準を遵守しなければならない。
オ 重点保全地域の指定がなされた際現に当該重点保全地域内で地下水を採取している届出事業者は、採取計画に基づく地下水の採取が採取基準に適合しないときは、当該採取計画を採取基準に適合するよう変更し、変更後の採取計画を当該指定の日から30日以内に知事に届け出なければならない。 |
(15) 採取の停止等の勧告 | 知事は、地下水の水位の急激な低下、著しい濁水の発生その他の異常な現象が生じた場合において、重点保全地域を指定して採取基準を定めるいとまがないと認めるときは、届出事業者に対し、地下水の採取の停止等を勧告することができる。 |
(16) 協議会の設置等
| ア 事業者は、地下水の水位、水質等の調査及び水源の涵(かん)養に関する事業を実施し、並びに採取の適正化及び合理化の推進についての相互の連携及び協調を図ることを目的として、鳥取県持続可能な地下水利用協議会(以下「協議会」という。)を設置する。
イ 協議会は、次の事業を実施するものとする。
(ア) 地下水の水位等の変動の観測及び水質の調査並びにこれらの結果の公表
(イ) 会員による水源の涵(かん)養を図るための森林整備活動の促進
(ウ) 地下水の採取についての会員間の情報交換及び調整
(エ) (ア)から(ウ)までに掲げるもののほか協議会の目的を達成するために必要と認める事業
ウ 協議会は、イの事業の実施について、学識経験者及び関係機関の指導を受けるものとする。
エ 知事は、協議会の運営について、必要と認める助言をし、又は事業計画その他必要な事項の報告を求めることができる。 |
(17) 罰則
| ア 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(ア) (7)アの届出をしないで井戸により地下水を採取し、又は井戸から採取する地下水の量を増加した者
(イ) (8)ア又は(12)アの命令に違反した者
イ 次の各号のいずれかに該当する者は、10万円以下の罰金に処する。
(ア) (6)イ又は(7)アの届出をする場合において虚偽の届出をした者
(イ) (12)イの命令に違反した者
(ウ) (14)オの届出をせず、又は虚偽の届出をした者
ウ 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、ア又はイの違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、ア又はイの罰金刑を科する。 |
(18) 施行期日等 | ア 施行期日は、平成25年4月1日とする。
イ 所要の経過措置を講ずる。
ウ 知事は、平成28年度末を目途として、この条例の規定及びその実施状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 |