1 事業の目的・概要
令和元年に本格デビューした当場育成の水稲新品種「星空舞」は、令和4年には県の水稲作付面積の1/4を占める3,000haまで普及推進する方針となっており、「星空舞」のブランド化推進については、県農政課題の重要項目に位置づけられている。「星空舞」の作付面積が大幅拡大するこのタイミングで、品質・食味の低下やばらつきの発生を未然に防ぐ研究や食味の特徴を科学的に分析する研究、種子の安定供給に寄与する研究を実施し、「星空舞」のブランド化を支える。なお、本事業は「現在(いま)と未来を担う良食味品種のブランド化を目指す研究」から課題を独立させ、新規事業として「星空舞」のみを重点的に研究を行うものである。
2 主な事業内容
1)標高の高い中山間地帯での栽培技術確立
標高150m以上の現地試験ほを設け、栽培条件と生育状況の関係を分析し適切な田植時期、栽植密度、施肥等を検出する。
2)特別栽培体系における有機質肥料施用技術の確立
有機質肥料(鶏糞、なたね油粕)による施肥体系を試験し、栽培技術の確立を図る。
3)転作跡における栽培方法の確立
初期生育が旺盛な大豆等転作跡において、元肥減肥、穂肥の調節等について、現地の栽培状況の情報を活用しながら検討する。
4)「星空舞」展示ほにおける現地栽培の実態把握と技術改善PDCAを実施
県内各地に設置された展示ほ重点調査水田を中心に、栽培・生育データの蓄積と解析を継続し、各地域での様々な栽培体系における特徴や対応する技術改善方策を明らかにしながら、現地へフィードバックする。ブランドイメージ定着のために、食味化学分析や官能食味試験結果等に着目した解析を進め、食味・品質の高位平準化を図る。
5)「星空舞」の美味しさの証明
「星空舞」の食味の特徴を科学的に分析するため、専門機関に委託し、客観的なデータを蓄積する。
6)「星空舞」種子の安定生産のために、種子歩留まりを向上させる手法を検討する。
3 事業期間
令和2年〜令和4年(3年間)
4 背景
1)「星空舞」の誕生
本県の平野部で作付されている早生品種の「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」は、夏場の高温に弱く、それにより近年では1等米比率が著しく低い状況が続いており、生産現場で深刻な問題となっている。また、全国的に水稲の良食味品種が相次いで誕生し、本県においてもオリジナル品種を求める声が高まり、当場の水稲新品種育成事業により、平成30年に夏場の高温に強い極良食味の水稲新品種「星空舞」が誕生した。
2)「星空舞」のブランド化推進
県農政課題の重要項目に「星空舞」のブランド化推進が位置づけられており、「星空舞」の作付面積が大幅拡大するタイミングで、品質・食味の低下やばらつきの発生を未然に防ぐ必要がある。
3)現行の「星空舞」の栽培法の拡充
令和元年度に普及推進した「星空舞」の栽培法はやや暫定的なもので、標高150m以下であることや、施肥法や田植え時期、栽植密度等を限定しており、現場からは様々な栽培法に対応した推進が求められている。
4)ブランド力の強化
全国に乱立するブランド米との競争に打ち勝つために、「星空舞」の美味しさの科学的根拠を蓄積することが必要である。
5)種子歩留まりの向上
種子生産現場では、「星空舞」を既存品種と同様の選別方法で種子精選すると、種子歩留まりが他の品種に比べて低いことが問題となっており、種子歩留まりを向上させる手法を検討することが必要である。
5 前年度からの変更点
「星空舞」の栽培法について、有機質肥料を使用した栽培法の確立や転作跡における栽培法の確立等、より具体的に、詳細な研究を行うこととした。種子の安定生産に向けた取組を追加した。
6 事業の効果
1)「星空舞」の栽培に係る現状と今後
項 目 | 現 状 | 今 後 |
標 高 | 標高150mまで | 標高の制限を緩和し、中山間地域での栽培技術を確立 |
土 壌 | 地力中庸以上の水田土壌 | 黒ボク、灰色低地土等を対象に栽培技術を確立 |
前作作物 | 水稲のみ | 大豆跡、野菜跡等での栽培技術を確立 |
施 肥 | 化成肥料のみ
速効性肥料の分施と元肥一発肥料 | 標高と土壌により施肥法を可変
生育に応じた肥料調節を策定 |
2)研究の達成目標
「星空舞」の面積拡大後においても以下の項目を達成する。
・一等米比率80%以上を維持
・収量水準「コシヒカリ」以上を維持
・食味ランキング※特A取得(※食味ランキングとは、日本穀物検定協会が年1回実施する、銘柄米のランク付けのこと)
・種子製品率70%以上
3)波及効果
・高位平準な生産による販売競争力向上
・種子生産安定による生産者の安心・安全確保
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
「星空舞」の県内各地における現地適応性
・標高150m以下の地域における、異なる栽培管理(作期、穂肥時期)、環境要因(標高、土壌)での生育状況を調査した。
・収量を確保しながら玄米品質を高く維持するためには、幼穂形成期までの初期の生育量を茎数470本/u程度確保しすることが重要とかんがえられた。
・玄米品質を維持しながら食味値を向上するためには、穂肥の適期施用と穂肥U時期の葉色診断による、適量施用を行うことにより、出穂期の葉色をSPAD値33.0以下に抑えることが重要と考えられた。
これまでの取組に対する評価
「星空舞」の栽培特性をある程度把握し、栽培指導の手引き、栽培手帳に反映させた。「星空舞」の「食感」「味」の特徴を単年度分のみ調査し、「星空舞」の令和元年度の本格デビューに向けて必要最小限の準備ができた。