1 事業の目的・概要
近年多発する大型台風等の影響により、ため池の決壊、それに起因する人的被害が発生する懸念が強まっている。
一方、決壊した場合に住民や重要施設に影響を及ぼすため池の基準が見直されたことにより、防災対策を要するため池(以下、防災重点ため池)の数が大幅に増加し、管理者である農家・地域住民による適切な保全管理体制の構築や避難体制の確保が喫緊の課題となっている。
このため、防災重点ため池の管理手法及び適切な管理体制について緊急的に整備することで、地域で取り組み可能なため池の管理体制を構築し、安全の確保及び住民全体の意識向上を図る。
2 要求理由
防災重点ため池においては、ハザードマップ(以下、HM)を作成するなどして住民の防災意識を高めるとともに安全な避難について啓発を行っているところだが、近年の豪雨において、HMが作成されているにも関わらず、関係住民が避難行動を取らないことが新たな課題として認識されてきており、これに対して、ため池管理者や有識者により構成される「ため池防災対策検討部会」を発足し、住民の避難行動及び安全の確保のための検討を行ってきた。
<主な意見1>
豪雨に備えて予めため池貯水量を低下させる「低水位管理」の有効性は認識するものの、それによるリスク(渇水による営農被害)が懸念され、実行には抵抗感がある。
<対応1>
渇水の影響を受けにくい「作物の期別ごとに必要な貯水量の設定による低水位管理」について具体的なモデル地区を設定し、具体的な手法の確立を図るための検討を行う。
<主な意見2>
防災の基礎となる点検・管理に関して、専門的な知識を持ち合わせない農家等の管理者が適切にため池の管理するためには、点検項目の簡素化・見える化や、緊急点検の電子化による労力軽減等が必要。
<対応2>
全ての防災重点ため池について、平常時の点検を管理者等が直感的、簡易的にチェックを行うための「個別点検チェックシート」を作成する確実な管理体制の確立を図る。
また、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発する「ため池防災支援システム」の導入及び管理者等への操作説明研修会を行い、緊急時点検の簡素化、電子化による労力軽減を図る。
3 要求内容
(単位:千円)
| 細事業名 | 内容 | 要求額 |
対応1 | 低水位管理実証事業 | ●低水位管理による営農リスクを除去するため、決壊時に下流への影響が大きいため池(2箇所程度)での作物の期別貯水量等の調査(1年目)及び検討(2年目)
| 3,000 |
対応2 | ため池の適正管理推進事業 | <平常時対策>
●農家や地域住民といった非専門家にもわかりやすい日常管理チェックシートの作成
| 4,300 |
<緊急時対策>
●ため池防災支援システムの導入のための機器整備
(タブレット端末整備)
●ため池防災支援システムの実地研修会の開催
| 364 |
合計 | 7,664 |
4 ため池防災対策検討部会
<設置概要>
台風17号や19号など、近年大型で強い台風が発生しており、今後、ため池の決壊など大きな被害が発生する懸念が強まっている。
このため、犠牲者ゼロを目指すために確実な避難行動に結びつく具体的な対策を検討する「防災避難対策検討会」の中に「ため池防災対策検討部会」を設置し、ため池に係る具体的な避難対策につながる基準等について検討を行うことで、防災重点ため池下流住民の避難行動の確保を図るものとする。
<構成メンバー>
ため池管理者、国立大学法人鳥取大学、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、市町村、県