1 事業の目的・概要
湖沼で発生する赤潮について、監視の効率化と情報収集の迅速化を目的として、写真画像から水質異常の展開を予測し、対策地点の絞り込みと湖沼モニタリングの強化を目指す。
2 主な事業内容
〇デジタルカメラを利用した、赤潮アオコ分布の検知予測
〇波長選択カメラを用いた、赤潮アオコの常時観測発生判別システムの検討
〇有毒貝毒プランクトンA.ostenfeldiiについて、増殖期の動向調査と、モバイルリアルタイムPCR装置による判別方法の検討
〇最終的には撮影画像及び予測情報のIoT配信システムを目指す
3 事業の必要性と効果
現状と課題
県内湖沼で度々発生する赤潮やアオコは、生活環境、漁業、観光などに対して負の影響を与えることから、その動向把握は住民と行政の双方にとって重要である。県内の一部の湖沼で有毒プランクトンが確認されたこともあり、その需要は近年ますます高まっている。
しかし、これら水質異常はいつどこからどのように広がっていくのかについて不明な点が多く、対応は常に後手に回っている。限られた情報から水質異常の兆候を捉え、その後の動向を判別し、その情報を分かりやすく提供する手段を構築しなければならない。
効果
〇湖沼環境の効果的な説明材料の提供
〇地域住民の環境意識の醸成
〇有毒赤潮プランクトン増加への迅速対応のための情報提供
4 前年度からの変更点
有毒貝毒プランクトンA.osatenfeldiiの共同研究を主導していた北里大学の山口教授が今年度末で退官するため、今後の検査態勢の見直しが必要となった。特に教授が担当していたA.osatenfeldiiの計数について、同定技術を持たない人間でも判別できるようにするための技術確立が必要となったため、研究内容として「デジタルカメラによる赤潮分類」「モバイルリアルタイムPCR装置による判別方法の検討」を追加するとともに備品として「数値解析ソフトウェア用追加モジュール」「モバイルリアルタイムPCR」を要求する。
5 事業期間、経費、内訳
単位(千円)
年度 | 事業内容 | 事業費 |
H31 | ○基礎情報の収集・蓄積
○解析アルゴリズムの検討
○解析プログラムの作成
○とりまとめ | 3,570 |
H32 | ○解析手法の実用化
○発信手法の検討
○とりまとめ | 3,567 |
単位(千円)
内訳 | 内容 | 要求額 |
備品購入費 | モバイルリアルタイムPCR、数値解析ソフトウェア用追加モジュール | 1,148 |
普通旅費 | 情報収集・協議等のための旅費 | 137 |
需用費 | 調査用の資材・消耗品 | 882 |
役務費 | ドローン撮影料、研修受講料、通信料 | 921 |
使用料・賃借料 | 調査船の傭船料、ソフトウェア保守 | 479 |
合計 | | 3,567 |
共同研究機関
広島大学、富士フイルム株式会社、株式会社NTTドコモ
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
・アオコや赤潮を精度良く観測する新型カメラの実用化に向けた実証試験を大学や企業と共同で進めており、カメラを用いた空撮、湖山池での常時観測試験などを実施中。
・赤潮貝毒プランクトンA.ostenfeldiiについて県内外の研究機関と共同で定点監視を行うと共に、湖山池から分離された本種について増殖条件の検討を行った。得られたデータは、湖山池管理のための資料として活用されている。
・ある程度の精度で画像から赤潮情報を取得し、自動的にマッピングするプログラムを作成することに成功した。
これまでの取組に対する評価
・カメラの試作機とそれらを用いた実証試験について、成果の一部は既に学会発表や投稿論文として公表されており、業界関係者や学識経験者などから一定の評価を得ている。