1 事業の目的・概要
スギ花粉症や松枯れ対策など、国民のニーズに合った主要造林樹種(スギ、ヒノキ等)の品種開発に関する試験研究及び精英樹選抜事業等によって選抜したスギ、ヒノキの検定林調査を行う。
2 主な事業内容
(単位:千円)
| 細事業名 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの変更点 |
1 | ハイブリッド無花粉スギの創出 | 花粉症対策の切り札とするため、県内で選抜された成長性、耐虫性、耐雪性及び材質強度に優れた品種に無花粉形質を取り込んだ付加価値の高い造林用スギ品種を創出する。 | 340 | 344 | 異なる系統の組み合わせで無花粉スギの探索(F1)及び創出(F2)を行う。 |
2 | 林木品種改良事業 | 精英樹選抜事業等によって選抜した主要造林樹種(スギ、ヒノキ)の遺伝的能力を検定するための次代検定林を調査する。 | 88 | 88 | 検定林調査箇所が1カ所減少する(3カ所→2カ所) |
合計 | 428 | 432 | |
3 事業の背景
(1)ハイブリッド無花粉スギの創出
・スギ花粉症が大きな社会問題となっており、花粉量の軽減が何より求められている。
・鳥取県では、スギ花粉発生源対策推進プラン(H20〜30)が策定され、人工林の更新時に花粉症対策品種などを植栽し、花粉の少ない森林に転換するとされている。
・ただし、これから普及される少花粉スギは年によって花粉を着ける場合があり、将来的には花粉を全く着けない無花粉スギに切り替える準備をしておく必要がある。
(2)林木品種改良事業
・林業種苗法に基づき、主要造林樹種の品種改良を行う。
・選抜品種の遺伝的特性を明らかにすることで、森林林業の生産性向上と質的充実を図る必要がある。
4 前年度との変更点
(1)ハイブリッド無花粉スギの創出
・別課題で選抜した「材質強度に優れた品種」が無花粉遺伝子を保有しているか確認するため、他県産無花粉スギとの人工交配によりF1苗木を作成する。
・昨年度と異なるF1同士の交配組み合わせを行い、無花粉候補木となるF2苗木を作成する。
・系統別にさし木を行い、発根特性等を調査する。
(2)林木品種改良事業
・昭和46年及び56年に設定したスギ次代検定林2カ所(日野町1カ所、湯梨浜町1カ所)の定期調査(40年時及び50年時)を行う。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
(1)ハイブリッド無花粉スギの創出
<事業目標>
・無花粉と優良形質を併せ持つスギを開発する。
<取り組み状況・改善点>
・県内優良スギ(42系統)が無花粉形質を保有しているか確かめるため、無花粉検定を行った。
・無花粉遺伝子を保有しているスギ品種と県内優良スギを交配し、ハイブリッド無花粉スギの母樹となる49家系(精英樹26家系、スギカミキリ抵抗性品種3家系、天然スギ19家系、耐雪性品種1家系)を作出した。
・ハイブリッド無花粉スギ(F2の中に存在)を創出するため、F1家系同士の交配を23通り(精英樹17通り、スギカミキリ抵抗性品種4通り、天然スギ2通り)実施し、無花粉個体を121本開発した。
(2)林木品種改良事業
<事業目標>
・次代検定林の成長調査により各品種の諸特性を明らかにし、採種穂園の改良及び推奨品種の選出を行う。
<取り組み状況・改善点>
・次代検定林の設定後、20年次までは5年毎に、21年次以降は10年毎に成長量等の調査を行ってきた。令和2年度は、3ヶ所(3.5ha)の定期調査を行い、データの収集及び解析を行っているところ。また、次回調査のために調査木をマーキングした。
これまでの取組に対する評価
(1)ハイブリッド無花粉スギの創出
・無花粉検定の結果、県内優良スギ(42系統)が無花粉遺伝子を保有していないことを明らかにした。
・ハイブリッド無花粉スギ創出の母樹となるF1集団49家系を作出するとともに、これらF1同士の交配により無花粉スギが着実に開発されている。
・県内優良系統として、別課題で選抜した「材質強度に優れた品種」を交配試験に加えることで、従来より幅広いニーズに対応できる品種開発を行っている。
(2)林木品種改良事業
・今後の林業における造林材料として、低コスト育林を可能にする成長性に優れた品種が求められている。これまで継続して行われてきた次代検定林の調査によって推奨品種を提示できるようになった。
また、単に成長に優れるだけではなく、少花粉形質や材質強度といった優良形質を備えた品種が明らかになってきており、新たな経営目標に合致した材料供給に貢献すると思われる。