現在の位置: 予算編成過程の公開 の 令和3年度予算 の 農林水産部の鳥取の花きとシバ栽培を支える安定生産技術の確立
令和3年度
当初予算 一般事業(公共事業以外)  一般事業要求      支出科目  款:農林水産業費 項:農業費 目:園芸試験場費
事業名:

鳥取の花きとシバ栽培を支える安定生産技術の確立

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農林水産部 園芸試験場 花き研究室 

電話番号:0858-37-4211  E-mail:engeishiken@pref.tottori.lg.jp

  事業費(A) 人件費(B) トータルコスト
(A+B)
正職員 会計年度任用職員 特別職非常勤職員
令和3年度当初予算額 4,520千円 30,109千円 34,629千円 2.8人 2.8人 0.0人
令和3年度当初予算要求額 4,520千円 30,109千円 34,629千円 2.8人 2.8人 0.0人
R2年度当初予算額 4,615千円 29,842千円 34,457千円 2.8人 2.8人 0.0人

事業費

要求額:4,520千円  (前年度予算額 4,615千円)  財源:県単(一部受託) 

一般事業査定:計上   計上額:4,520千円

事業内容

1 事業の目的・概要

(1)本事業は、本県で生産額が多いか今後需要が期待できる花き4品目に絞って試験を行う。切り花(ストック、シンテッポウユリ、アスター)、花壇苗実付き枝物シバ
(2)県内の切り花花壇苗は、施設と露地が約半々で生産されている。施設の約6割はスイカ等夏野菜の後作として栽培されているが、暖房がないため気象の影響を受けやすく、収穫期が大幅に遅れたり切花長が短く市場から頻繁にクレームを受けている。
(3)これまで全国に先駆けて行っているEOD栽培(注)を、本県特産切り花や花壇苗に応用し、無加温でも品質向上や栽培期間の短縮に繋がる新たな栽培法を確立する。
(4)一方、露地で栽培されるシバや枝物などは、野菜や果樹の補完品目として栽培可能だが、シバは生産者の高齢化で土壌改良が行われず生理障害が多発している。そこで、簡易な土壌改良による生理障害抑制法を確立する。さらに実付き枝物は、新たな樹形管理法等の検討で省力・高付加価値栽培法を確立する。
(5)なお、現地ハウスの半数は電気が通っておらず、EOD光照射による開花調節技術が活用できない。そこで、冬春期に電源(光源)が無くても被覆するだけでストック、アスター、花壇苗等の生育が大幅に促進する新たな光質制御フィルムを開発するための基礎調査を、鳥取大学、民間企業と共同で行うR3年度鳥取大学からの受託)。
(注)EOD(=End of Day):日没後の短時間のこと。日没後数時間は植物の活性が高まり、温度や光への感受性が強くなる。この時間帯に集中した加温や、生育に効果的な光を照射する処理をそれぞれEOD加温、EOD光照射と称している。これまで農研機構等と連携して研究を行い、農林水産省の農業新技術2013に選定された。その後鳥取大学やF社等と連携試験を行い、ストックやトルコギキョウ等で生育促進効果が高いLED照明(商品名:早咲きジオライト)を開発し、生産現場で活用されている。

2 主な事業内容

(1)切り花の安定出荷
ストックこれまでの成果花芽分化前に遮光を行うと開花が遅くなり、葉数が増加した。また、花芽分化後にEOD光照射を行うと開花が早まり草丈が伸長した。
・生育後半の施肥・潅水管理が花首徒長や うらごけの発生に影響していると考えられた。
R3年の試験・EOD光照射栽培における適切な施肥・かん水法の検討。
・主要品種におけるEOD光照射、遮光、PCa(植物成長調整剤)散布等、開花調節技術効果の検討
シンテッポウユリこれまでの成果・露地(盆出荷)栽培では、施肥量が多いと鑑賞価値が低い段咲き・多輪が多発した。
・定植後の潅水を現行より多く施すと、抽台(茎の伸長)率および切り花品質が向上した。
R3年の試験・露地作型の長期(7〜9月)連続出荷体系の確立
・生育ステージに応じた潅水管理・施肥法の検討
アスターこれまでの成果・秋冬出荷栽培では、FR(遠赤色)光よりR(赤色)光や蛍光灯で草丈伸長効果が高かった。
R3年の試験・赤色光や蛍光灯の点灯、消灯時期の組み合わせによる開花促進や抑制法の検討。

    (2)花壇苗の低コスト開花促進
    これまでの成果・花き類46品目のうち36品目は、EOD光照射で開花が促進し、切り花長が伸長した。
    ・46品目のうち17品目は、EOD光照射とわい化剤を組み合わせると、開花を促進しながら草姿がコンパクトになった。
    ・花き類46品目のうちガーベラなど24品目は、EOD加温で開花が促進し、花数が増加した。
    R3年の試験・EOD光照射とわい化剤の組み合わせが効果的な品目・品種の検索
    ・温床や小型トンネルを利用した簡易EOD加温(保温)法の検討
    ・EOD光照射+EOD加温(保温)+わい化剤を組み合わせた早春出荷法の検討

    (3)実付き枝物の省力高付加価値栽培
    これまでの成果・果樹棚を利用したツルウメモドキの誘引法は、労働時間が慣行栽培の20分の1になった。
    ・ツルウメモドキは出荷前の常温乾燥で8割以上が落葉し、摘葉作業が省力化できた。
    R3年の試験・ツルウメモドキの地這い誘引や一文字整枝による短枝多収技術の確立。
    ・サルトリイバラの熟期毎の簡易落葉法(常温乾燥時間等)の検討。

    (4)シバの生産性向上をめざした栽培技術の開発
    これまでの成果・砂土でも土壌改良やローラー鎮圧を行うと、根が表層に集まった。
    ・黄化症は、カッターによる断根や、ピートモス等の施用で軟らかくした土で栽培すると発生が皆無だった。
    ・‘グリーンバードJ’の沈み症(春はげ症状)発生は、前年の施肥量や施肥時期が影響していると考えられた。
    R3年の試験・‘グリーンバードJ’砂土栽培における保湿資材混和と鎮圧の併用処理の検討。
    ・‘グリーンバードJ’の沈み症を抑えるための施肥管理法の検討。
    ・シバ黄化症抑制のためのバーチカルカット(断根処理)や土壌改良材混和の検討。

    (5)新たな光質制御フィルムの開発(R3年度:受託
    R3年の試験・内張用および外張り用フィルムを試作して展帳し、県特産花きの生育特性を明らかにする。

3.事業の効果

品目
技術確立後
切り花ストック・出荷期の分散化と品質向上で、切り花単価向上により粗収益を20%向上
シンテッポウユリ・出荷率65%→80%に向上
アスター・出荷期の分散化と草丈伸長により切り花単価10%向上
花壇苗・主要花壇苗50品目のEOD光照射・EOD保温と、わい化剤併用に対する反応性の解明
実付き枝物・樹形管理と落葉法の確立で栽培面積3ha→4.5haに増加
シバ  ・生理障害抑制により‘グリーンバードJ’栽培面積25ha→35haに増加
新たな光質制御フィルムの開発・本県の冬春期に、被覆するだけで生育が旺盛になるフィルム開発のための基礎データが集積できる。

4.R3年度要求額内訳

内訳
要求額(千円)
報酬※         (72)
栽培資材費、実験用器具・試薬、燃料 等
4,026
普通旅費
  259
役務費
  235
合計
4,520
※報酬は農業総務費で要求(受託収入を充当)

5.年度別試験内容と事業費(単位:千円)

事業実施期間:令和元年度〜5年度

年度
試験内容
事業費
R1(1)




(2)
(3)
(4)
切り花
ストック:施肥、潅水法の検討
シンテッポウユリ:生育に合わせた施肥、潅水法の解明
トルコギキョウ:EOD光照射に反応性の高い品種の検索
アスター:効果的な光源と光強度・照射時間の検討
花壇苗:EOD光照射+わい化剤処理の検討
枝物:新たな整枝による高付加価値栽培法の検討
シバ:砂土栽培法の検討、生理障害抑制法の検討
4,615
R2(1)




(2)
(3)
(4)
切り花
ストック:施肥・潅水法の検討
シンテッポウユリ:生育に合わせた施肥、潅水法の解明
トルコギキョウ:EOD光照射に反応性の高い品種の検索
アスター:効果的な光源と光強度・照射時間の検討
花壇苗:EOD光照射+わい化剤処理の検討
枝物:新たな整枝による高付加価値栽培法の検討
シバ:砂土栽培法の検討、生理障害抑制法の検討
4,615
R3(1)



(2)
(3)
(4)
(5)
切り花
ストック:施肥・潅水法、開花調節、開花予測技術の検討
シンテッポウユリ:生育に合わせた施肥、潅水法の解明、細霧ミスト等利用による抽台率向上
アスター:開花調節に効果的な消灯や点灯時期の検討
花壇苗:EOD加温(保温)+わい化剤処理の検討
枝物:サルトリイバラの簡易落葉法の検討
シバ:砂土栽培法の検討、生理障害抑制法の検討
新たな光質制御フィルムの開発:内張・外張用光質制御フィルム開発のためのデータ集積
R3年度:受託
4,520
(一部
受託)
R4(1)



(2)
(3)
(4)
切り花
ストック:施肥・潅水法、開花調節、開花予測技術の検討
シンテッポウユリ:生育に合わせた施肥、潅水法の実証、細霧ミスト等利用による高品質化
アスター:開花調節に効果的な消灯や点灯時期の検討
花壇苗:EOD光照射+EOD加温(保温)+わい化剤処理の検討
枝物:サルトリイバラの簡易落葉法の検討
シバ:砂土栽培法の検討、生理障害抑制法の検討
4,292
R5(1)



(2)
(3)
(4)
切り花
ストック:施肥・潅水法、開花調節、開花予測技術の実証
シンテッポウユリ:生育に合わせた施肥、潅水法の実証、細霧ミスト等利用による高品質化
アスター:光照射法の現地実証
花壇苗:EOD光照射+EOD加温(保温)+わい化剤処理の実証
枝物:整枝法と簡易落葉法の実証
シバ:砂土栽培法のマニュアル化、生理障害抑制法の実証
4,292


これまでの取組と成果

これまでの取組状況

<取り組みの内容>
(1)切り花
・ストック:花穗の徒長を抑えるための潅水管理や、EOD光照射や遮光による開花調節法を確立する。
・シンテッポウユリ:細霧ミストや換気、施肥、潅水方法を検討し、高出荷率、高品質となる栽培法を確立する。
・トルコギキョウ:暖房を使用しないで11〜12月に出荷する新たな栽培法を確立する。
・アスター:赤色光等の点灯、消灯時期の組み合わせによる開花促進や抑制法を検討する。
(2)花壇苗:花壇苗の開花を進め、草姿をコンパクトにする新たな低コスト高品質化法を開発する。
(3)枝物:ツルウメモドキの一文字整枝、サルトリイバラ簡易落葉のための自然乾燥時間を検討する。
(4)シバ:沈み症(仮称)や黄化症等の生理障害を抑制する方法を確立する。
(5)新たな光質制御フィルムの開発:内張用および外張り用フィルムを試作して展帳し、県特産花きの生育特性を明らかにする(R3年度:受託)。

<現時点における達成度>
(1)切り花
・ストック:
ア 生育後半の施肥・かん水管理が花首徒長やうらごけの発生に影響していると考えられた。
イ 遮光を行うと開花が抑制され、その後EOD光照射を行うと草丈が著しく伸長し、開花が早まった。(達成率60%)
・シンテッポウユリ:
ア ブラスチングは花芽分化期の強遮光と高温による影響が強い。
イ 定植後のかん水を多くすると、抽台率が向上した。(達成率70%)。
・トルコギキョウ(秋冬出荷):
簡易夜冷育苗でも定植後にEOD光照射を行うと、冷房育苗と同等に草丈が伸長した。(達成率70%)。
・アスター:
R(赤色)光や蛍光灯はFR(遠赤色)光より草丈伸長効果が高いことが明らかになった(達成率60%)。
(2)花壇苗:花き類46品目のうち36品目はEOD光照射で開花が促進し、切り花長が伸長した。さらに、EOD光照射とわい化剤を併用すると、17品目が開花を促進しながら、コンパクトに生育した(達成率70%)。
(3)枝物:
ア 果樹棚を利用したツルウメモドキの誘引法は、労働時間が慣行栽培の20分の1になった。
イ 出荷前の常温乾燥で葉もぎ作業が省力化できた(達成率75%)。
(4)シバ:
ア 砂土における‘グリーンバードJ’の根は籾殻くん炭や高分子吸収体を施用すると、地表面付近に集まりやすいことがわかった。
イ 黄化症はカッターで断根し、ピートモス等を施用したやわらかな土では発生が皆無であった(達成率70%)。

これまでの取組に対する評価

<H30年度の外部評価(中間)の結果>
評点:13.8 判定:◎
評価委員の主な意見
・花きについて、EODを活用した先進的な技術開発により、競争力の向上が図られていると感じる。
・品目ごとの反応などEOD技術のさらなる完成度を目指して下さい。
・とてもよい成果が出ていると思います。
・花き王国とっとりを目指していただきたい。
・おおむね計画通りであり、さらに品目によっては当初計画以上の成果も感じられる報告です。今後の研究に期待します。

<自己分析>・これまで暖房コストをかけても太平洋側の切り花に太刀打ちできなかった品目が、EOD処理によって低コストで太平洋側並みの高品質化が可能となるものが明らかになってきた。 外部委員による中間評価では、これまでの結果を高く評価していただいた。一日も早く多くの生産者に利用してもらえる汎用性の高い技術に仕上げられるよう、現場とも緊密に連携しながら計画的に試験を遂行したい。

工程表との関連

関連する政策内容

C園芸産地の基盤強化

関連する政策目標

・花の開花調節、高品質化


財政課処理欄


要求額の財源内訳(単位:千円)

区分 事業費 財源内訳
国庫支出金 使用料・手数料 寄附金 分担金・負担金 起債 財産収入 その他 一般財源
前年度予算 4,615 0 0 0 0 0 0 0 4,615
要求額 4,520 0 0 0 0 0 0 228 4,292

財政課使用欄(単位:千円)

区分 事業費 国庫支出金 使用料・手数料 寄附金 分担金・負担金 起債 財産収入 その他 一般財源
計上額 4,520 0 0 0 0 0 0 228 4,292
保留 0 0 0 0 0 0 0 0 0
別途 0 0 0 0 0 0 0 0 0