1.事業の目的・概要
「流域治水」は、流域内のあらゆる地域資源を活用し、流域に関わる全ての関係者が主体的に治水対策を実施することで、浸透貯留効果(氾濫までにどの程度時間を稼ぐことができるか)を発揮するものであり、農業の持つ多面的機能に大きな期待がかかっている。
そこで、流域内の関係者である住民や農家の具体的な取り組みを支援するため、流域内に存在する農地や農業用施設といった資源の活用策を検討し、併せて農業の持つ多面的機能への理解の醸成を図ることで、流域一体となった取り組みを加速化させることを目的とする。
2.令和3年度の主な事業内容
農地及び農業用施設に係る基礎的な調査及び理解醸成のための研修のために必要な経費
内容 | 要求額 |
(1)農地及び農業用施設の効果的・現実的な運用を検討するための基礎調査
(例)
・現状農地の落水口の形状(素掘り式、コンクリート桝式)の調査
・ため池の斜樋や底樋といった取水施設(水位調整施設)の有無の調査 | 5,870千円
(国1/2)
(模型製作は県土整備部で要求) |
(2)田んぼの深水管理、ため池の効果的な運用に関する検討
(例)
・落水口の形状毎に最適な堰板の設置形式を選定(経済性や利便性)
・斜樋放流口の高さから、降雨前に何番目の放流口まで開けるべきかを検討(降雨貯留効果、営農継続性) |
(3)農業の持つ多面的機能を向上・有効活用することで、降雨の貯留効果や洪水氾濫の開始を遅らせる効果が発揮され、下流域でどのような変化が起こるかを視覚的に体験してもらうための模型作成
(例)
・田んぼの落水口堰板の設置・未設置を変化させることでどの程度貯水量が向上するのか
・降雨開始時のため池の水位を調整することで越流までにどのくらい時間が稼げるのか
⇒ これらの対策により下流域に洪水が発生するまでの時間や水深にどのような変化が生じるのかを表現 |
(4)多面的機能への理解を醸成するための研修会等の実施(他部局と連携) | 100千円
(単県) |
計 | 5,970千円 |
(1)〜(3)については鳥取大学と連携して検討
3.現状・問題
治水対策については、近年河川の決壊といった激甚な災害が全国的に頻発する状況を踏まえ、河川整備のみでなく流域全体でどのように洪水を処理していくかを検討する「流域治水」への転換が図られている。
その中で、農業分野に対しては集水域の農地において雨水をしみこませることによる洪水量の減少効果、雨水を農地やため池等で一時的に貯めることによる洪水量の減少効果、洪水発生時間の遅延効果などが期待されている。
また、鳥取県においても、令和元年度の水防対策検討会において大規模な河川整備に関する中長期的課題として、流域治水について検討が必要と提言がなされた。
このような中、令和新時代創造PT(防災PT)において、河川課を中心に「みんなで進める流域治水」をテーマとし、鳥取市の大路川流域をモデルとした流域治水対策の検討が始まったところである。