1 事業の目的・概要
県議会常任委員会から提言されている廃棄物由来バイオマス原料のエネルギーとしての利活用や、天神浄化センターの汚泥処理工程において発生する温室効果ガス排出量の削減を県施策として推進するため、下水汚泥等の利活用について民間提案を募集した中から最優秀に選定した事業提案の実現可能性を検証する導入可能性調査を行う。
2 主な事業内容
(1)目的
・廃棄物由来のバイオマス原料によるエネルギーの利活用を推進するため、現在廃棄物処分(焼却・埋立)されている廃牛乳・グリストラップ汚泥を用いた消化ガス発電事業を推進する。(本事業により、廃牛乳0.7トン/日、グリストラップ汚泥1.3トン/日の廃棄物削減が見込まれる。)
・2050年二酸化炭素ゼロに向けた県の取り組みとして、天神浄化センターの汚泥処理工程において発生する温室効果ガス排出量の削減を推進する。(本事業により約639トン-CO2/年の削減が見込まれる。)
・全国的に例のない廃牛乳・グリストラップ汚泥と下水汚泥による消化ガス発電事業であるため、中部圏域において県を中心とした先導的なモデル事業として推進する。(県天神川流域下水道と町公共下水道事業との連携事業とするために県でリスク評価を十分行ったうえで合意を目指す。)
(2)事業概要
提案手法(DBO+民設民営+民間独自事業)による複合バイオマス資源利活用事業の導入可能性調査を実施する
要求額:18,480千円
導入可能性調査:事業手法の検討、参入意向調査、消化ガス発生試験、それらを踏まえた実現可能性の評価
(3)最優秀提案の概要
概要 | ア 広域連携事業(DBO((※1))
・中部3町の公共下水道の脱水機(高価)に替えて高濃度濃縮機(安価)に更新し、濃縮後の汚泥をタンクローリーで天神浄化センターに運搬して集約処理する。(県が資金調達)
・天神浄化センターに下水汚泥の消化施設を新設し、町の濃縮汚泥と併せて消化ガスを発生させる。(県が資金調達)
・消化ガスを事業者に売却する。
イ 消化ガス発電事業(民設民営)
・消化ガスを県から購入する。
・天神浄化センター敷地内に設置したガス発電機により発電した電力を売却する。
ウ 地域連携事業(提案に関連して事業者が独自に実施する事業)
・WET(※2)系廃棄物(廃牛乳及びグリストラップ汚泥(※3))を収集し、発酵促進剤に加工する。
・発酵促進剤を県に売却のうえ消化槽に投入し、ガス発生量を増大させる。 |
主な設備 | 高濃度濃縮設備(中部3町の公共下水道に設置)、汚泥消化設備、消化ガス発電設備 |
利用資源 | 下水汚泥(天神浄化センター及び町公共下水道)、廃牛乳及びグリストラップ汚泥 |
費用対効果 | 県(天神流域下水道)及び3町(単独公共下水道)トータルで2億円前後の負担軽減 |
※1 DBO ・・ design-build-operateの略 公共が資金調達し、施設の設計・建設・運営を民間が一体的に実施する方式
※2 WET ・・ 水分を多く含んでいるバイオマス。食品廃棄物や下水汚泥など。
※3 グリストラップ汚泥 ・・ 飲食店の厨房などに設置され油脂分離阻集器で分離された油脂分及び堆積汚泥
<国土交通省の意見(評価)>
国交省補助事業(先導的官民連携支援事業)の応募にあたり、国交省からは事前に次のような評価を受けている。
・民間ならではのノウハウやアイデアが活かされた先進的かつ意欲的な提案である。
・活用する資源や町公共下水道事業との連携などは今後の応用につながる可能性があるため、是非検討を進めてもらいたい。
・検討にあたっては今後の民間の提案意欲にもつながるよう、事業者のインセンティブなどにも配慮いただきたい。
3 検討スケジュール
令和3年3月:民間提案の審査講評の公表
令和3年8月(仮):県有施設・資産有効活用戦略会議(第一次検討(庁内での事業手法の定量評価及び定性評価))
令和3年10月〜令和4年3月:導入可能性調査の実施
令和4年度:県有施設・資産有効活用戦略会議(第二次検討(導入可能性調査を参考にした評価))
4 参考
・人口減少に伴う使用料収入の減少や施設の老朽化に伴う更新投資の増大といった下水道事業が抱える諸課題に対応するために経営基盤の強化が求められる中、昭和59年に供用を開始した天神浄化センターについても事業の持続可能性を確保するため、下水処理によって発生する下水汚泥を中心としたバイオマス資源の有効活用策を検討しているもの。令和2年度に民間提案を募集したところ、3者から提案があり、「鳥取県複合バイオマス資源利活用検討会」で審査を行ったところ、第1順位者が最優秀提案に選定された。
<審査講評までの流れ>
令和2年10月27日 第1回検討会(募集要項の検討)
令和2年12月1日 第2回検討会(募集要項の検討)
令和2年12月15日 募集開始
令和3年3月9日 第3回検討会(プレゼンテーション)
令和3年3月30日 審査講評の公表
・現在、天神川流域下水道で発生する下水汚泥は、民間処理業者に処理委託(搬出)のうえ100%リサイクル(たい肥化等)されているが、年間8千万程度の高額な処理費が必要となっている。そのため、下水汚泥を原料としたバイオガス発電等を行うことにより、施設全体の維持管理費用の低減につなげ、結果として、使用料の引き上げを抑制する効果が生まれることが期待される。
・県議会福祉生活病院常任委員会からも、「下水汚泥等の廃棄物由来のバイオマス原料によるエネルギーの100%利活用について施策として検討するとともに、老朽化しつつある天神浄化センターの在り方についても検討していただきたい。」との提言(令和元年12月18日)をいただいている。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
・令和2年度に「鳥取県複合バイオマス資源利活用検討会」を設置し、募集要項の検討及び民間提案の審査を行った。これに対して3者から提案書が提出され、そのうち1者について、天神川流域下水道事業の費用低減効果が見込まれるため、最優秀提案として選定のうえ、令和3年3月に審査講評を公表した。
これまでの取組に対する評価
・あくまで民間提案書上ではあるが、20年間で2億円前後のLCC低減が示されているため、事業の実施可否を判断するにあたり、この提案の実現可能性の検証を行う必要がある。