<本県の取組と展望>
水素技術分野について、本県は平成28年に「鳥取県水素エネルギー推進ビジョン」を策定し、水素供給・利活用システム等の県内構築による水素サプライチェーン形成を検討してきた。平成29年1月には、鳥取市内に「すいそ学びうむ」を開設し、小規模ながら先駆的に水素の活用可能性に取り組んできたが、全国的に燃料電池自動車等の普及が伸び悩んでいることもあり十分な成果につながっていない。
しかし近年の社会全体の脱炭素の動きにより、水素活用が再び大きな脚光を浴びている。本県は過去のビジョン策定等の経験等により蓄積してきた資産を活かせる素地を有しており、県内企業の水素技術開発等を進めることで市場参入の可能性が高まる。
<国の動き>
〇国は2050(令和32)年のカーボンニュートラルに向けて、令和3年6月に「グリーン成長戦略」、同年10月に「第6次エネルギー基本計画」を官民一体で策定し、成長が期待される水素産業やエコカー産業等の取組に重点を置いている。
〇脱炭素技術の中でも我が国が先行している水素関連技術は、水素利活用に向けて急速に検討が進められており、企業の関心も高く、市場参入に向けて水素サプライチェーン技術のニーズが生まれ始めている。
〇令和3年4月に策定・公表した「鳥取県産業振興未来ビジョン」の推進に向け、県内企業や支援機関が参画する「脱炭素技術研究会」を立ち上げ、研究会内にエコカー素材・エコカー電装品・水素サプライチェーンの3WGを編成し、エコカーや水素などの脱炭素技術分野を、将来の本県を支える産業分野に育てていくことを目指している。
〇水素サプライチェーンWGには、18の企業・団体等が参画し、水素利活用の実証研究や技術開発への方向性を検討している。
〔第1回水素サプライチェーンWG〕(令和3年9月8日開催)
〇経済産業省「水素・燃料電池戦略協議会」座長を務める東京工業大学 柏木 孝夫 特命教授・名誉教授が参加し県内企業と意見交換を実施。
〇鳥取県商工会議所連合会の児嶋祥悟会長が参加し、WG参画企業に水素産業創造に向けた連携を呼びかけ。
〔第2回水素サプライチェーンWG〕(令和3年10月21日開催)
〇スマート水素ステーションの内部見学やWG参画企業の研究開発の進捗発表等を行って情報を交換。
〇参画企業の多くが試験室レベルの技術開発に留まることから、実際に水素を貯める・流す・使うというサプライチェーン技術に係る実証の場の必要性を議論した。
<脱炭素技術研究会「水素サプライチェーンWG」参画企業の意見>
〇 国の水素導入本格化を踏まえて、県内企業の技術を結集して水素利活用の実証研究を進めていきたい。(鳥取県商工会議所連合会 児嶋 祥悟 会長)
〇 オールジャパンに倣い、「オール鳥取」で全国に負けない水素サプライチェーン実証を実施したい。また水素専用の高級配管ではなく、安価な配管でも水素脆化を防げるコーティング技術を開発したい。(表面処理加工業)
〇 水素に関心のある企業が集まり、鳥取県産業技術センターとマイクロ水力発電の勉強を続けている。今後は水素吸蔵合金による水素貯蔵技術にチャレンジしたい。(自動化機器製造業)