1 事業の目的・概要
県内3河川(千代川、天神川、日野川)では、アユ遡上量が減少傾向にある。特に平成26年以降その傾向が顕著になり、アユ資源量が低下したことで、3河川の漁獲量は歴史的低水準となっている。各河川では漁協により産卵場造成やカワウ対策等、アユ資源回復のための努力が続けられている。一方、資源量を低下させる要因には、天然アユ遡上量の多寡のみならず、魚道が機能せず遡上阻害が起きることで、遡上期に生息に適した場所までアユが遡上できないことも考えられる。また、魚道機能の低下した堰堤下流部には、遡上できないアユが滞留しカワウ等による食害が大きくなりやすい、という影響もある。
このため、県では平成29年度に、国、県、漁協、専門家で組織した「水辺の環境保全協議会」を設置し、3河川(千代川・天神川・日野川)の魚道設置改修について必要箇所及び優先順位等を協議した。令和3年度は天神川の郡山堰堤の魚道整備改修を実施中であり、令和4年度は千代川水系八東川の永野堰の魚道について施工することとしている。
2 主な事業内容
河川 | 魚道(堰堤) | 場所 |
八東川(千代川水系) | 永野堰 | 鳥取市片山 |
・3河川とも下流側からの整備を基本としている。
・千代川においては、永野堰に小わざ魚道を整備することで、上流にある八東川および私都川への魚介類の遡上が容易になる。
事業の背景
水産資源保護法(第22条)の規定により、土地改良区等(堰堤等の所有者又は占有者)は、さく河魚類のさく上を妨げないように堰堤等の管理をしなければならないとされており、多くの堰堤には魚道設備が設置されている。しかし、設置当時は機能していた魚道も、その後の自然災害による損壊や澪筋の変化等により機能しなくなったものが多数見られるようになった。機能の回復が望まれるところであるが、土地改良区等の組合員数の減少等から資金が捻出できず、魚道の修繕が進んでいないのが現状である。
一方、内水面漁業協同組合では、漁業権魚種(アユ等)の増殖義務に基づき、毎年、アユの放流等を行っているが、魚道の機能不全等により十分な資源を増殖させるには至っていない。すなわち、各漁協が増殖のため努力しているにもかかわらず、アユ資源量は近年、非常に低い水準にある。魚道改修により河川の連続性(遡上・降下の容易さ)を回復させることは、アユ資源回復の一助となることが期待されるとともに、その他河川回遊性魚介類にとっても有効となる。魚道修繕には生態系保全など河川環境の改善といった公共的な側面も含まれており、早急に県で修繕を行うこととする。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
(事業目標)
県3大河川(千代川・天神川・日野川)において堰堤等により河川の連続性が妨げられている箇所を修繕することで、アユ等有用魚介類資源ならびに河川生態系の回復に寄与することを目指す。
(取組状況)
各水系全体の生態系を豊かにするために、関係機関(国、県、漁協、専門家)が河川環境や生物・生態系保全等に関して情報を共有し、水辺の環境保全の推進及び実施について協議する「水辺の環境保全協議会」を29年6月5日に設置した。水辺の環境保全協議会では魚類等の遡上を阻害している魚道の改修や河川環境の改善に係わる施策等について全体の協議会及び各水系毎の部会で協議している。
(改善点)
水産課では本事業に於いて、水辺の環境保全協議で承認を得た修繕すべき魚道について年1基のペースで修繕等を実施してきた。しかし、緊急で改善する必要があると判断される堰堤は9基あり、全ての工事が終了するのに10年以上掛かることから、修繕ペースを上げることとし、より早く良好な河川環境に回復出来ることを目指した。
これまでの取組に対する評価
平成30年度事業に於いて、千代川の大井手用水堰にスロープを小わざ魚道として修繕した。令和2年度事業に於いて、天神川の郡山大口堰に袋詰め玉石を魚道様に設置する設計を実施。令和3年度事業に於いて、天神川の郡山大口堰施工を発注中、千代川の永野堰と日野川の蚊屋堰を設計中である。これらの事業により魚介類が遡上できるよう改善を進めているところである。
既に完成している大井手用水堰の小わざ魚道は、適切に粗石を設置したことで、通水時の流速が抑えられ、アユの遡上に寄与していると判断される。漁協からも評価されている。
なお、水辺の環境保全協議会は、各漁協も参加し、魚道に限らず、カワウやその他について、情報を共有するとともに対策を検討・協議する場として、漁協等から評価を得ている。