これまでの取組と成果
これまでの取組状況
(1)中海調査
○造成浅場に出現する魚類の把握及び水質測定
【目標:出現種の経年変化及び魚類の生育環境の把握】
(取組状況・改善点)
4〜9月の月1回、サーフネットを用いて、造成浅場に出現する稚魚を採集した。また、月の上・中・下旬に水質調査を実施。R2年度からデータロガーによるDO(溶存酸素)と水温の長期連続観測を開始。
○稚魚の隠れ場となる簡易構造物の開発・効果検証
【目標:1uあたりのマハゼの出現量10尾及び構造物への海藻付着】
(取組状況・改善点)
H31年度にコンクリートブロックと塩ビ管による簡易な構造物(ブロック礁)を製作(1.3平米/基)し、これを9基設置して効果検証した。R2年度は、ブロック下部の構造の違いによりマハゼの利用度に相違が生じるか検証した。なお、R2年度にはブロック礁に海藻を付けたものと付着させなない礁の生物利用調査を行った。
H31年度とR1年度は同構造物にウミトラノオ(ホンダワラ類)の母藻を吊り下げ播種を実施し、海藻の付着条件を調査した。
○マハゼ養殖
【目標:生産量1500尾】
(取組状況・改善点)
地元の民間業者と共同研究を実施。造成浅場で全長4〜5cmの幼魚を採集し、これを民間業者施設内の6トン水槽で約4か月飼育することで、成長や生残率を調査。また、コスト削減のため、タイマー付きの自動給餌器を用いて餌やり時間の短縮化を実施中。
(2)カタクチイワシの資源動態
【目標:資源動向や漁場形成要因の把握】
標本船調査、聞き取り調査や統計調査等を実施し、カタクチイワシ銘柄、シラス銘柄の漁獲量や単価等を整理。また、漁獲されたシラスの大きさや他種の混ざり具合、大まかな漁場を把握。漁場内に調査点を一つ設け、表、中、底層の連続的な水温を計測中。
(3)アオナマコの資源調査
【目標:資源量の推定や産卵特性の把握】
産卵時期を特定するため、生殖腺調査を行うとともに、分布量や生息密度の把握のため、標本船調査や市場調査を実施中。
これまでの取組に対する評価
(1)中海調査
○造成浅場に出現する魚類の把握及び水質調査
・平成24年度から実施された調査により、各年、主に稚魚期からなる魚類が20種程度確認されており、春〜夏期においては、比較的多様な魚類の出現があり、餌となるイサザアミなども多数見られている。
・昨年度は7科18種(過去3か年平均22種)の魚類が採集された。
・9月上・中旬に貧酸素が数日続く状況がみられ、風との関係性を分析したところ、貧酸素が起こるメカニズムとして東系の風が関与している可能性が示唆された。
○稚魚の隠れ場となる簡易構造物の開発・効果検証
・簡易構造物(ブロック礁)内は多種多様な生物の育成場となっていた(魚類14種、甲殻類13種、貝類7種、多毛類1種を確認)。
・ウミトラノオがマハゼの餌場機能の向上に貢献しているデータを示せた。
・マハゼは6月〜12月にかけてブロック礁を利用し、当期間の平均出現数は1平米あたり2.4尾。9月に約5尾/平米と最も利用し、周辺域と比較して非常に生息密度が高い状況を確認した。
・コンクリートブロック下の空間をある程度仕切った方が、マハゼの利用度が高い結果が得られた。
・簡易構造物へウミトラノオ(海藻)を付着させる方法は、ほぼ目途が立った。
・マハゼ幼魚の採集は、大型サーフネットのまき網方式で採集効率を最大化できた。
・約4か月の飼育で、13cm(平均体長)の出荷サイズまで成長させることができ、R2年度の試験生産尾数は1,269尾(昨年比145%)まで増やせた。生残率を高める飼育方法もわかりつつある。
但し、採集量に年変動があること。販路や採集者の不在といった課題があり、まだ事業化の目途は立たない。
・R3年度からは境港総合技術高校と連携してマハゼの種苗を採集しており、当事業が中海の生物や環境教育としても活用されている。
・地元料理店の養殖マハゼの評価は高く、価格次第だが取り扱いを希望する者も多い。コスト計算を行い、利益を上乗せした適正価格で需要があるか本年度調査する予定。
(2)カタクチイワシの資源動態
・漁獲統計情報や標本船調査により、漁獲実態が把握できるようになった。
・R2年10月に漁業者へこれまでの調査結果をまとめて報告を行った。引き続きデータを蓄積して、漁況予測までして欲しいとの要望をいただいた。
・5月〜11月頃にかけて美保湾内に連続的にシラスが加入していることがわかり、今後親魚資源との関係性や漁場形成メカニズム等を明らかにしていきたい。
(3)アオナマコの資源調査
・標本船調査の結果、美保湾内のナマコ漁場を把握することが出来た。
・市場調査の結果、漁獲されたアオナマコの体重組成を把握することが出来た。また、既存の知見を活用し、体重組成から年齢組成を推定することに成功した。年齢組成は資源管理をする上で必要不可欠な情報であり、推定する手法を確立できたことは大きな成果である。
・精密測定を行った結果、昨年度の予備調査では認められなった産卵直前と思われる個体を採集することに成功した。