これまでの取組と成果
これまでの取組状況
1.キジハタ栽培漁業実用化支援調査
〇事業目標
キジハタ栽培漁業を推進するため、放流手法の改良(高生残化)や放流効果(回収率、費用対効果B/C)の検証を実施する。
〇取組状況・改善点
〔放流技術〕
・適正な放流尾数を検討するため、放流尾数を5.4万尾から2万尾へ削減した。また、事業放流とは別に稚魚の移動生態の把握および漁港内放流の検討のため赤碕地区で試験放流を実施した。
〔放流効果〕
・平成24年放流群の3〜5歳魚までの回収率を把握した。※キジハタは放流後3年後から水揚げされる。
・市場調査による追跡調査は頻度を増やして実施したが、標識(腹鰭抜去)の付いた放流魚があまり発見できていない。潜水による追跡調査は今後取り組むこととしている。
2.ナマコ増殖試験
〇事業目標
水揚げ量が減少した境港地区のナマコ(漁獲量:15t程度)の資源管理及び増殖策を検討し、水揚げの維持・増大を図る。
〇取組状況
・令和2年度及び令和3年度は稚ナマコを捕集する簡易な採苗器(主な基質はカキ殻)を境港港内に設置。令和3年度は最大で270個体/1箇所(場所:境港一文字防波堤内側)の稚ナマコを採集することに成功。
3.藻場造成対策事業
〇事業目標
県内の藻場の現状を把握し、より効率的で安価な藻場造成手法を開発することで、県内の藻場減少に対しての対策を講じる。
〇取組状況・改善点
〔小型海藻プレートによる藻場造成技術の実用化〕
漁業者が取り組んでいる藻場造成事業の中で“木毛セメント板”製の小型増殖プレートを使用してもらい、種苗の生残状況を定期的な観察により把握した。また、食害対策を考慮した設置法の検討に取り組んだ。
〔藻食性魚類の食害に対応した混成藻場造成技術の確立〕
平成27年から実施しているスポアバッグを用いた藻場造成調査の観察を引き続き行った。クロメの幼体が確認できるものの、藻場の広がりは確認できなかった。この要因として日照不足による生育不良が考えられる。
〔新たな藻場造成対象種の検討〕
コンクリート製ブロックを用いて母藻設置を行ったが、コンクリートブロックの重量が軽いことや母藻の活着が悪いことから、波浪による影響を受けやすく藻場の造成が困難であった。
4.貝類付加価値向上対策事業
〇事業目標
各貝類の資源増殖やブランド化に努めることで現状の生産金額の維持・増大を図る。
これまでの取組に対する評価
1.キジハタ栽培漁業実用化支援調査
・試験放流後の追跡調査で種苗の生残、摂餌状況の把握を確認することができた。引き続き追跡調査に取り組む。
・鳥取県の沿岸に見合った放流尾数の再検討が早急に必要である。
・キジハタ種苗放流(栽培漁業)の自立化に向けて、回収率の向上のための放流技術の改良や放流効果(回収率、費用対効果)の把握が不可欠である。
2.ナマコ増殖試験
令和3年度の結果より、採苗器を設置することで稚ナマコを捕集することができたことから採苗適地や適期等の採苗方法の確立に向けある程度の道筋が立った。資源増殖に向け、今後も採苗した稚ナマコの放流方法の検討や漁業者への技術の普及を進める必要がある。
3.藻場造成対策事業
・木毛セメント板を用いた小型プレートの実用化に向け、設置したプレートの経過観察とともに指導を適宜続ける。
・漁業者から要望の挙がっている深場の藻場造成を進めるため、より効果的な手法の開発及び検証を行う必要がある。
・藻場造成活動の支援、指導を例年通り適宜行う。
・食害生物の増加など環境の変化に合わせた藻場造成を進めるため、「鳥取県藻場造成アクションプログラムII」の改訂に早急に取り組む必要がある。