1 事業の目的・概要
中国における飼料需要増加や南米産のトウモロコシの作況悪化、ロシア・ウクライナ情勢、原油高、円安など様々な影響により、飼料価格が高騰し、県内畜産農家の経営を圧迫していることから、5月補正予算で対応しているところであるが、配合飼料価格が5月時点の見込みより、7月以降+11,400円と過去最大を更に更新するなど、畜産農家の大幅な負担増となっていることから緊急的に追加支援を行う。
2 主な事業内容
飼料高騰等への追加支援
対象者 | 5月補正予算での支援内容 | 9月補正での追加支援 | 補助率 | 事業実施主体 | 事業対象期間 | 現計予算額
(単位:千円) | 補正要求額
(単位:千円) | 計
(単位:千円) |
酪農家
| 令和3年度の1頭あたりの飼料価格を基準として、基準価格を超えた飼料代の1/3を支援 | 飼料価格の更なる高騰による支援の追加
※一日牛1頭あたり67円追加支援 | 1/3以内 | 大山乳業農協等 | 令和4年10月〜令和5年3月 | 338,428 | 76,000 | 412,812 |
養鶏農家 | 配合飼料価格安定制度(国)の生産者負担金の1/2を支援 | 飼料価格の更なる高騰により、配合飼料価格安定制度で補てんされる上限を超える農家負担の一部を支援 | 1/2以内 | 鳥取県養鶏協会等 | 令和4年10月〜令和5年3月 | 35,584 | 300,000 | 335,584
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養豚農家 | 豚マルキンで補てんされる上限を超える部分の1/2を支援 | 飼料価格の更なる高騰により、豚マルキンや配合飼料価格安定制度で補てんされる上限を超える個人農家負担の一部を支援 | 1/2以内 | 鳥取県産ブランド豚振興会等 | 令和4年10月〜令和5年3月 | 6,076 | 50,000 | 54,441 |
肉牛農家 | 牛マルキンで補てんされる上限を超える部分の1/2を支援 | 牛マルキンで補てんされない「導入・出荷輸送費」の上昇分に係る個人負担の一部を支援 | 1/2以内 | JA等 | 令和4年10月〜令和5年3月 | 22,612 | 18,000 | 39,812 |
公共牧場 | − | 公共牧場に預託している後継牛が加入できない配合飼料価格安定制度の補填相当の一部を支援 | 1/3以内 | 鳥取県畜産振興協会 | 令和4年4月〜令和5年3月 | ー | 26,000 | 24,707 |
計 | 405,700 | 470,000 | 875,700 |
※現計予算の405,700千円は、経営改善支援3,000千円を含む。
3 要求理由
5月補正予算で飼料高騰に対する畜産農家支援を実施したところであるが、7月から9月期の配合飼料価格が過去最高の11,400円の値上げ(令和3年度四半期平均3,111円)となり、想定以上の飼料価格の高騰とコロナ禍で畜産物価格への転嫁も難しい中、畜産経営はさらに苦しい状況に追い込まれている。
(1)このため、酪農経営では、5月補正時で設定していた牛1日1頭あたりの飼料費上限額2,100円を既に超えている状況であり、負担軽減のためにも上限額の見直しが必要となっている。
(2)養鶏農家においては、所得補償制度がない中、取引価格への価格転嫁も難しく、さらに配合飼料価格安定制度での補填も基金の枯渇により分割補填となるなど、急激な飼料高騰が養鶏経営をさらに圧迫している状況である。
(3)養豚農家では、豚マルキンが企業経営も含む全国一律の算定方式のため発動しづらい仕組みとなっている。このため「大山ルビー」等を生産する個人養豚農家は、マルキンの標準的経営収支を下回っている状況であってもマルキンの発動がないことから、経営がさらに悪化している状況である。
(4)肉用牛経営は、牛マルキン制度の生産費に「素牛の導入・と場への出荷輸送料」が対象外であるため、燃料高騰もあり生産者経営を圧迫している。
(5) 公共牧場は、酪農家等の後継牛育成の負担軽減に大きく貢献しているが、配合飼料価格安定制度に加入できないため、飼料価格の高騰の影響を直接受けることとなり、3年連続で預託料金の値上げを余儀なくされている。さらに、令和4年4月以降も飼料価格の急激な高騰に公共育成牧場が対応できなくなっている状況に陥っている。この飼料価格の急騰で農家の経営状況は過去にない苦境にあり、預託料への転嫁が困難な状況となっていることから相当な緊急支援が必要である。公共育成牧場では、令和5年度に向け、配合飼料の購入抑制のため「とうふかす」の給与についても検討し、預託料の値上げ幅の抑制を図るなどの取組で酪農家への理解を得ることとしている。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
〇令和4年7月に、配合飼料価格が過去最高の値上げとなり、約10万円/トンとなった。
〇これは、5月補正時の想定を上回る値上げで、県内農家の経営を相当圧迫している。
〇配合飼料価格安定制度の補てん金については、令和2年10月から12月を基準とした飼料価格からの上昇分については3割程度の補てんに留まる見込みである。
〇そのため、養鶏農家に対して、飼料高騰で配合飼料価格安定制度で補てんされない部分について一部支援を行う。
〇県が作出した大山ルビー等の銘柄豚を飼育している個人養豚農家の生産費は、企業養豚を含む豚マルキンの経営試算より高いため、飼料高騰が続いても豚マルキンの発動がない中で、個人経営養豚農家の経営が悪化している。
〇そのため、個人養豚農家に対して配合飼料価格安定制度や豚マルキン制度(国県)で補てんされない部分について、一部支援を行う。
〇県放牧場を運営している(公財)鳥取県畜産振興協会は、配合飼料価格安定制度への加入ができないため、令和3年から続いている飼料高騰に対して経営が悪化している。農家経営が厳しい状況下で預託料の値上げも困難な状況であるため、飼料高騰部分について一部支援を行う。
〇7月からの配合飼料価格の急騰に伴い、酪農支援について基準価格を見直しする。
これまでの取組に対する評価
〇所得補償制度のない生乳(酪農家)に対して、飼料高騰分について県、市町村、大山乳業が一体となって支援を実施したことにより、酪農家の赤字軽減に繋がった。
〇同じく、所得補償制度のないブロイラー(養鶏農家)などに対して、配合飼料価格安定制度の生産者負担金に対して支援を実施したことにより、農家負担の一部軽減を図った。
〇牛マルキンや豚マルキンといった所得補償制度が適用されている肉牛や養豚農家に対しては、補てんされない部分について支援を行うことで、農家赤字負担の軽減に繋がった。
〇また、飼料高騰により経営状況が悪化した農家に対して、税理士等による経営改善について一部支援を実施した。