現在の位置: 予算編成過程の公開 の 令和4年度予算 の 水産振興局の栽培漁業研究事業
令和4年度
当初予算 一般事業(公共事業以外)  一般事業要求      支出科目  款:農林水産業費 項:水産業費 目:栽培漁業センター費
事業名:

栽培漁業研究事業

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水産振興局 栽培漁業センター 増殖推進室 

電話番号:0858-34-3321  E-mail:saibaicenter@pref.tottori.lg.jp
  事業費(A) 人件費(B) トータルコスト
(A+B)
正職員 会計年度任用職員 特別職非常勤職員
R4年度当初予算要求額 7,545千円 20,982千円 28,527千円 2.3人 1.0人 0.0人
R3年度当初予算額 7,308千円 21,050千円 28,358千円 2.3人 1.0人 0.0人

事業費

要求額:7,545千円  (前年度予算額 7,308千円)  財源:単県 

事業内容

1 事業の目的・概要

細事業名
事業期間
目的、概要など
キジハタ栽培漁業実用化支援調査令和3年度〜令和7年度キジハタ栽培漁業を推進するため、放流手法の改良(放流尾数や場所の見直し、種苗の高生残化)や放流効果(回収率、費用対効果B/C)の検証を実施する。
ナマコ増殖試験令和2年度〜令和4年度鳥取県の漁獲の大半を水揚げする境港地区のナマコ資源を回復させることを目的に、簡易で安価、かつ漁業者が自ら取り組むことができるナマコの増殖手法を開発する。
藻場造成対策事業【令和新時代創造プロジェクト・環境気象変動PT事業】令和2年度〜令和4年度将来にわたって藻場の保全を保つため、藻場の現状を精密に把握し、温暖化を考慮した藻場保全技術を確立・普及する。最終的にはこれらの技術・知見をとりまとめ、「鳥取県藻場造成アクションプログラム」を改訂する。
貝類付加価値向上対策事業令和4年度〜
令和6年度
本県の沿岸漁業において収益性が高い潜水漁業で漁獲される貝類3種(イワガキ・アワビ・サザエ)の付加価値向上を目的とした短期畜養試験の実施や、ブランド化に向けた科学的な根拠データの収集を進める。

2 主な事業内容

(単位:千円)
細事業名
内容
要求額
前年度予算額
前年度からの変更点
キジハタ栽培漁業実用化支援調査(1)適正な放流尾数の検討
鳥取県の沿岸に見合った放流尾数の検討
(2)放流技術の更なる改良
変更した放流規模に合わせた放流場所や場所の再検討、放流後の追跡調査、稚魚の移動生態調査
(3)放流効果の効果検証
耳石による年齢(放流年)査定、試験放流魚の追跡調査、漁獲物調査(市場調査)等
3,795
4,097
・廃液処理業務委託費を栽培漁業センター管理運営費へ移管
・調査の組み換えのため使用料及び賃借料が減額
ナマコ増殖試験ナマコの再生産に適した環境に稚ナマコを効率的に供給するための採苗器を開発する
(1)採苗適地の選定(令和2年度)
幼生の付着、稚ナマコの成育しやすい場所を潜水調査で選定
(2)採苗器の開発(令和2年度〜令和3年度)
幼生が付着しやすく簡易で安価な採苗器を開発
(3)採苗器設置の効果検証(令和2年度〜令和4年度)
開発した採苗器を適地選定した海域に設置し、効果を検証
(4)普及・指導(令和4年度)
採苗器の設置及び維持管理方法等を漁業者に普及・指導
997
1,052
なし
藻場造成対策事業(1)最新技術であるドローン(空中、水中)の利用による藻場の現状把握の強化
従来からの定点調査より精度の高いモニタリング手法の開発、環境変動等による藻場の消失を監視するとともに藻場造成や漁場管理に資するデータの収集。
(2)小型海藻プレートによる藻場造成技術の実用化
安価で大量かつ簡便に設置できるアラメ、クロメ移植用小型プレートを用い、移植可能な箇所を増やすことで食害や漂砂等による種苗消失のリスクを分散し、母藻群落の確保を行う。
(3)ウニ類及び藻食性魚類の食害対策強化
ウニ類の効率的な駆除技術の開発や駆除効果の検証に取り組み、食害対策を強化、実施体制を構築する。
植食性魚類の食害に対応した藻場造成手法として、ホンダワラ類およびアラメ、クロメ混生藻場造成効果を検証する。
(4)新たな藻場造成対象種の検討
深場における藻場造成技術を開発するため、従来用いているクロメよりも深場に生息可能なツルアラメを用いた藻場造成効果を検証する。
1,691
1,038
・備品購入(空撮画像編集ソフト)による増額
【新規】貝類付加価値向上対策事業(1)小型イワガキの短期畜養試験
イワガキ礁に高密度で着生する小型のイワガキを短期畜養し、付加価値向上効果について検証する。
(2)大山ブランド化に向けた科学的根拠の収集
大山山麓の沿岸域は豊富な海藻類を食べ成育するアワビ・サザエの県下随一の好漁場となっている。当海域では海底から自噴する海底湧水が確認されており、環境部局と連携して海底湧水の水質調査、周辺環境への影響等について明らかにし、新たな大山ブランドの創出を目標とした科学的なデータの収集に努める。
1,062
【廃止】資源回復技術開発試験
1,121
合計
7,545
7,308

3 背景

1 キジハタ栽培漁業実用化支援調査
      ・2008年に試験放流を開始してから漁獲量は大きく増加(2008年3.7t→2013年13.3t:過去最高)。
      ・更なる漁獲量の増大を目指し、2014年に放流尾数を2〜3万尾から約4万尾へ増加。2015年以降は約5万尾の放流を継続中。しかし、漁獲量は2013年の13.3tをピークに穏やかな減少が続いており、放流尾数を増加させた効果が現れていない。
      ・当センターでは、県内の磯場面積を基準に20万尾まで放流可能と想定し、2015年以降は毎年約5万尾の放流を継続してきた。
      ・しかし、最近の調査結果から近年の県全体の漁獲尾数は年間1.5万尾で、資源尾数も概算で10万尾程度と推定され、放流魚の大半が漁獲加入していないことが判明。
      ・本県地先の環境収容力は想定したほど高くはなく、過剰な放流による密度効果(棲み処と餌生物の不足が発生)が原因ではないのかと考えている。このため、鳥取県沿岸に対する適正な放流尾数の検討や放流技術等の更なる改良、また、費用対効果を高めるための支援調査を行う。

    2 ナマコ増殖試験
      ・ナマコは潜水漁業や桁網漁業で漁獲され、乾燥ナマコや塩蔵ナマコなど加工食品として多くが中国に輸出され需要は高まっているが、近年は漁獲量が減少傾向にある。(当県のナマコ類の漁獲量・漁獲金額:R1年度22.9t、2,500万円、R2年度14.8t、1,400万円)
      ・特に県内全体の漁獲量の6〜7割程度を漁獲する境港地区では近年、資源の減少が懸念されており、県漁協境港支所の漁業者からは「ナマコの資源管理や資源増殖に必要な調査・研究に取り組んで欲しい」という要望があがっている。そこでR2年度より資源管理については水産試験場【中海・美保湾資源生産力調査】、資源増殖については当センターが担当して調査を進めることとなった。

    3 藻場造成対策事業
      ・本県では、H16年に「鳥取県藻場造成アクションプログラム」、H28年に「鳥取県藻場造成アクションプログラムII」を策定し、官民が協力しながら藻場造成活動に取り組んできた。
      ・しかし近年は、水温の上昇に伴う海藻の枯死や植食性生物による食害が以前にも増して発生しており、その対応策として、比較的高水温に耐性のあるホンダワラ類を用いた混生藻場の造成やクロメを用いた深場での藻場造成及び新たな藻場造成対象種としてツルアラメの可能性の検証等に取り組んできた。
      ・環境の変化に合わせた藻場造成を進めるため、現在、「鳥取県藻場造成アクションプログラムII」(H27〜R2年度)の改訂とともに水産庁の指導による「藻場ビジョン」の策定を進めている。

    4 貝類付加価値向上対策事業
      ・本県の沿岸漁業において貝類を主な対象とする潜水漁業は漁船漁業と比較して低コストで操業でき、収益性が高く、漁業者が収入源を確保する上で重要な手段となっている。(当県の潜水漁業の漁獲量・漁獲金額:R1年度289t、2.7億円、R2年度210t、2億円)
      【イワガキについて】
      ・平成29年度から当センターで県内11地区に設置したイワガキ礁(平成24年から国の水産基盤整備事業で2520基の六脚ブロックを設置)のイワガキの着生状況の調査、岩盤清掃等による資源増殖策の研究を進め、漁協、漁業者による漁礁の利用が進行中。
      ・一方でイワガキ礁で漁獲されるイワガキについては、高密度で付着する場所では小型のイワガキが多く、出荷しても通常の半値以下の安値となっていることが課題。
      ・また、県内の漁獲量については、近年、天然資源の限りが徐々に見え始め、今後も岩盤清掃等の資源の再構築に必要な手法をより積極的に漁業者に普及させ、再現性が高いイワガキ資源増殖策について検証及び技術指導を行う必要がある。
      【サザエ・アワビについて】
      ・種苗放流、漁獲制限等の取組により、漁獲量が維持され、アワビについては全国的に不漁傾向にあることから単価も上昇し、収益性の高い漁業対象種となっている。一方でサザエについては関西市場等では他産地と比較して本県産は価格が安い状況にある。
      ・鳥取県漁協からは価格向上に向けて改善の余地があるアワビ・サザエのブランド化や価格向上策の検討(サイズ選別の厳格化や規格の統一化など)を進めるよう当センターに要望が上がっている。
      ・また、浜の活力再生プラン(西部地区)ではアワビ、サザエ等の海産物について地域の特色を生かした『大山ブランド』の創出について計画されている。

4 前年度からの変更点

〇資源回復技術回復試験は事業期間の終了に伴い廃止 〇新たに貝類付加価値向上対策試験を開始(事業期間:令和4年度〜令和6年度)
○委託料:廃液処理業務委託を栽培漁業センター管理運営費へ移管
○備品購入費:空撮画像編集ソフトの購入

これまでの取組と成果

これまでの取組状況

1.キジハタ栽培漁業実用化支援調査
〇事業目標
キジハタ栽培漁業を推進するため、放流手法の改良(高生残化)や放流効果(回収率、費用対効果B/C)の検証を実施する。
〇取組状況・改善点
〔放流技術〕
・適正な放流尾数を検討するため、放流尾数を5.4万尾から2万尾へ削減した。また、事業放流とは別に稚魚の移動生態の把握および漁港内放流の検討のため赤碕地区で試験放流を実施した。
〔放流効果〕
・平成24年放流群の3〜5歳魚までの回収率を把握した。※キジハタは放流後3年後から水揚げされる。
・市場調査による追跡調査は頻度を増やして実施したが、標識(腹鰭抜去)の付いた放流魚があまり発見できていない。潜水による追跡調査は今後取り組むこととしている。
2.ナマコ増殖試験
〇事業目標
水揚げ量が減少した境港地区のナマコ(漁獲量:15t程度)の資源管理及び増殖策を検討し、水揚げの維持・増大を図る。
〇取組状況
・令和2年度及び令和3年度は稚ナマコを捕集する簡易な採苗器(主な基質はカキ殻)を境港港内に設置。令和3年度は最大で270個体/1箇所(場所:境港一文字防波堤内側)の稚ナマコを採集することに成功。
3.藻場造成対策事業
〇事業目標
県内の藻場の現状を把握し、より効率的で安価な藻場造成手法を開発することで、県内の藻場減少に対しての対策を講じる。
〇取組状況・改善点
〔小型海藻プレートによる藻場造成技術の実用化〕
漁業者が取り組んでいる藻場造成事業の中で“木毛セメント板”製の小型増殖プレートを使用してもらい、種苗の生残状況を定期的な観察により把握した。また、食害対策を考慮した設置法の検討に取り組んだ。
〔藻食性魚類の食害に対応した混成藻場造成技術の確立〕
平成27年から実施しているスポアバッグを用いた藻場造成調査の観察を引き続き行った。クロメの幼体が確認できるものの、藻場の広がりは確認できなかった。この要因として日照不足による生育不良が考えられる。
〔新たな藻場造成対象種の検討〕
コンクリート製ブロックを用いて母藻設置を行ったが、コンクリートブロックの重量が軽いことや母藻の活着が悪いことから、波浪による影響を受けやすく藻場の造成が困難であった。
4.貝類付加価値向上対策事業
〇事業目標
各貝類の資源増殖やブランド化に努めることで現状の生産金額の維持・増大を図る。

これまでの取組に対する評価

1.キジハタ栽培漁業実用化支援調査
・試験放流後の追跡調査で種苗の生残、摂餌状況の把握を確認することができた。引き続き追跡調査に取り組む。
・鳥取県の沿岸に見合った放流尾数の再検討が早急に必要である。
・キジハタ種苗放流(栽培漁業)の自立化に向けて、回収率の向上のための放流技術の改良や放流効果(回収率、費用対効果)の把握が不可欠である。
2.ナマコ増殖試験
令和3年度の結果より、採苗器を設置することで稚ナマコを捕集することができたことから採苗適地や適期等の採苗方法の確立に向けある程度の道筋が立った。資源増殖に向け、今後も採苗した稚ナマコの放流方法の検討や漁業者への技術の普及を進める必要がある。
3.藻場造成対策事業
・木毛セメント板を用いた小型プレートの実用化に向け、設置したプレートの経過観察とともに指導を適宜続ける。
・漁業者から要望の挙がっている深場の藻場造成を進めるため、より効果的な手法の開発及び検証を行う必要がある。
・藻場造成活動の支援、指導を例年通り適宜行う。
・食害生物の増加など環境の変化に合わせた藻場造成を進めるため、「鳥取県藻場造成アクションプログラムII」の改訂に早急に取り組む必要がある。




要求額の財源内訳(単位:千円)

区分 事業費 財源内訳
国庫支出金 使用料・手数料 寄附金 分担金・負担金 起債 財産収入 その他 一般財源
前年度予算 7,308 0 0 0 0 0 0 0 7,308
要求額 7,545 0 0 0 0 0 0 0 7,545