1 事業の目的・概要
国史跡妻木晩田遺跡の集落像を解明するため、発掘調査年次計画に基づき、「とっとり弥生の王国調査整備活用委員会」の指導助言を得ながら発掘調査を実施する。また、調査研究年報等により調査研究成果の情報発信を行う。
2 主な事業内容
(単位:千円)
| 細事業名 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの変更点 |
1 | 発掘調査 | (1)重点調査【国補1/2】
・妻木新山地区2区の南側斜面部
(2)自然科学分析委託【国補1/2】
(3)保存処理委託【国補1/2】
(4)分布調査
(5)出土品整理作業【国補1/2】 | 38,387
(人件費除く) | 38,984
(人件費除く) | 【変更】重点調査の実施期間を2年から3年に変更。
【追加】近年の調査で出土した鉄製品の保存処理の実施。
【終了】調査地の伐採撤去。 |
2 | とっとり弥生の王国調査整備活用委員会の開催等 | (1)とっとり弥生の王国調査整備活用委員会【国補1/2】
(2)調査研究現地指導【国補1/2】
(3)委員・文化庁連絡調整等事務【国補1/2】 | 475 | 493 | |
3 | 発掘調査研究年報等刊行 | 発掘調査成果等をまとめた発掘調査報告書や調査研究年報を刊行し、最新の調査研究情報を発信【国補1/2】 | 標準事務費 | 標準事務費 | 【臨時】発掘調査報告書 |
4 | 出土品再整理 | 整理作業員による出土品等の整理・復元【国補1/2】 | 標準事務費
(人件費除く) | 標準事務費
(人件費除く) | |
5 | 標準事務費 | | 2,542 | 2,141 | |
合計 | 41,404 | 41,618 | |
3 事業の背景
発掘調査長期計画第3期(※)の調査課題を明らかにするため、分布調査、内容確認調査で得られた情報をもとに重点調査地点を設定し、調査を行っている。令和4年度からは、斜面部の土地利用を解明するため、令和2年度、3年度の調査成果をもとに、妻木新山地区南側斜面の調査を3ヶ年かけて行っているところ。令和5年度は令和4年度の南側の調査を行う予定としている(※3はローマ数字)
- 重点調査や内容確認調査など、発掘調査等で得られた情報を広く知ってもらうため、調査研究年報で情報発信を実施。
- 保存して後世に伝え、活用を促進していくため、過去の調査で出土した資料の再整理を行い、健全な状態に修理していく。
4 前年度からの変更点等
重点調査を2ヵ年で実施る計画であったが、期間を3ヵ年に変更して実施。
重点調査等によって出土した金属製品を適切に保存していくため、保存処理を実施。
重点調査によって、多くの遺物が出土し、整理に多くの日数が見込まれるため、整理作業員の雇用期間を拡充。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<事業目標>
○調査課題を解決し、妻木晩田遺跡の全体像を明らかにする。
【調査課題】
A:集落の構造と変遷に関する問題
B:墓制に関する問題
C:生活空間・生業に関する問題
D:古環境に関する問題
E:弥生時代以前、弥生時代以降の妻木晩田遺跡とその周辺に関する問題
⇒長期計画第3期(※数字はローマ数字)では、課題Aを中心に課題C、課題Dの解明を目指す。
<取組状況>
○国史跡妻木晩田遺跡の集落像を解明するために、調査研究を継続的に実施。
・平成22〜24年度:仙谷地区
・平成25年度:松尾頭地区
・平成28年度:妻木山地区谷部
・平成29〜30年度:松尾頭地区
・令和元〜3年度:妻木新山地区斜面部、仙谷1号墓。
・」令和4年度〜:妻木新山地区斜面部(重点調査)
○発掘調査研究年報及び発掘調査報告書を刊行し、学術的な調査研究の成果を企画展等で広く公開するとともに、ホームページやFacebookにより速報的に情報発信を行っている。
これまでの取組に対する評価
<評価>
・平成23〜27年度の調査により、新たに仙谷8・9号墓を発見し、仙谷8号墓が史跡内最大規模の墳墓であることや弥生時代墳墓としては県内に類例のない埋葬施設をもつことが判明した。島根県石見地方や広島県北部山間部の弥生時代終末期の墳墓の埋葬施設と類似性がうかがわれ、妻木晩田遺跡の評価を考える上で重要な成果となった。
・平成28年度の調査により、妻木晩田遺跡では初めてとなる木製品が出土したほか、ボーリング調査によって人工的に管理されたクリ林やベリー類の果樹園が存在したことがわかり、これまでの妻木晩田集落の景観イメージを大きく変える発見となった。
・平成29〜30年度の調査により、これまで様相が不明であった集落縮小期(2世紀末〜3世紀初め)の有力者の墳丘墓を確認した。また、尾根上に連続して築造された墳丘墓の分布範囲も明らかにし、史跡指定地外にも保護すべき重要遺構が分布することを明らかにした。
・令和元〜2年度の調査により、斜面部にも竪穴住居跡を築き、積極的な土地利用がなされていたことが明らかになった。
・令和3年度の調査により、仙谷1号墓の整備に資する情報を得ることができたほか、貼石に使用された石材、埋葬が執り行われた時期等、新たな情報を得ることができた。
・令和4年度の調査により、斜面部には段上遺構が連なって構築され、丘陵頂部とは異なった土地利用がなされていたことが明らかとなった。