これまでの取組と成果
これまでの取組状況
(1)中海調査
【長期目標】造成浅場内の出現魚種等の長期的な変動把握
生物モニタリング調査、水質調査等を実施し、出現種の経年変化及び魚類の生育環境の把握した。溶存酸素計によるR3.9.1から12.7までの溶存酸素計による連続観測を行ったところ、総測定時間(1,932時間)の21.6%が貧酸素(3mg/L以下)であることが判明した。
【長期目標】造成浅場を利用した水産振興策の提言
〇簡易構造物によるマハゼの育成場の開発し、1uあたり5尾以上を目標として、試験を実施し、コンクリートブロック下にスペーサーを付け、隠れる空間を設けた改良型ブロック礁が4.1尾/u、瓦を利用した瓦礁が4.4尾/uと、瓦礁の方がマハゼが多く出現した。令和4年9月の結果では、改良型ブロック礁は、7.8尾/uを記録したが、R3度好成績であった瓦礁が2.3尾/uと昨年を下回った。
〇マハゼほか水産資源増殖に寄与する簡易的な藻場造成手法を開発することを目標として、ウミトラノオ付着試験を行い、これまで、母藻を吊るして幼体を付着させていたが、天然ウミトラノオが繁茂する周辺に瓦・ブロック等を設置することで付着させる手法を試験中。
【長期目標】マハゼ養殖の事業化
〇令和3年度は、採取した幼魚(2,133尾 平均体長約4cm)を、約5か月間飼育した結果、出荷サイズ (平均体長約13cm)に成長(1,804尾 歩留85%)した。令和4年度は、種苗採集3,000尾、養殖生産歩留り9割を目標として、これまで採集していたサーフネットで昨年の6回を上回る17回採集したものの623尾しかとれなかった。一方、新たにたも網による採集を試み、629尾を採集(合計1,315尾)し、飼育中。
〇有用種であるテナガエビの生息状況を把握するため、新たな採集方法として、かご網(13尾/個・日 夕日ヶ丘)や、たも網(45尾/人・時間 米子湾等)で採集することができた。
(2)カタクチイワシの資源動態
【目標:資源動向や漁場形成要因の把握】
標本船調査、聞き取り調査や統計調査等を実施し、カタクチイワシ銘柄、シラス銘柄の漁獲量や単価等を整理。また、漁獲されたシラスの大きさや他種の混ざり具合、大まかな漁場を把握。漁場内に調査点を設け、連続的な水温を計測中。
これまでの取組に対する評価
(1)中海調査
○造成浅場のモニタリング
・造成浅場内での定期観測では、貧酸素水(3mg/L以下)は、確認されなかったが、溶存酸素記録計による連続観測では、貧酸素が確認され今後も継続的に観測が必要と考えられた。
・造成浅場に出現する稚魚は、サーフネットによる調査により、主に稚魚期からなる魚類が毎年20種類程度確認されている。令和3年度は平年並みの9科21種が出現し、出現尾数は、993尾で平年より減少(過去5年平均2,367尾)。出現尾数の96.6%はハゼ科魚類(ニクハゼ、チチブ属、ビリンゴ種等)であった。
○稚魚の隠れ場となる簡易構造物の開発・効果検証
・簡易構造物(ブロック礁)内は多種多様な生物の育成場となっていた。また、ウミトラノオがマハゼの餌場機能の向上に寄与していた。
・簡易構造物は、コンクリートブロック下の空間をある程度仕切った方が、マハゼの利用度が高かった。瓦はそのまま使用でき、改良型ブロック礁と同等以上の効果が令和3年度に確認されたものの、今年度、砂等堆積による機能低下傾向が見られ、課題が残った。
・ブロック・瓦等の基質に、より簡易にウミトラノオ(海藻)を付着させる方法を試験中。、
〇マハゼ養殖試験
・マハゼ幼魚は、たも網でも採集可能なことがわかった。これまでのサーフネット採集では、マハゼが大きくなり逃避能力が高くなって採集効率が落ちる8月以降であっても採集できたことから、大きい幼魚を採集することで、養殖期間の短縮させ、コスト削減できる可能性が見えてきた。
・マハぜ幼魚は約4〜5か月の飼育で、出荷サイズ(平均体長約13cm)まで成長させることができ、養殖技術の目途は立った。一方、幼魚の採集量に年変動があること。生産コストに見合った価格での販路や採集者の不在といった点で、事業化には課題が残った。
・令和3年度からは境港総合技術高校と連携してマハゼ等稚魚の採集や養殖マハゼを利用した加工実習を行われており、中海の生物や環境教育としても活用されている。
・令和3年度から、境港総合技術高校のマハゼの食文化と中海の魚介類の生態を学習する取組を支援し、同校が採集したマハゼ稚魚157尾は、養殖用の種苗として提供された。
(2)カタクチイワシの資源動態
・漁獲統計情報や標本船調査により、漁獲実態が把握できるようになった。
・漁業者へ、調査結果の報告を行い、引き続きデータを蓄積して、漁況予測までして欲しいとの要望を受けた。
・5月〜11月頃にかけて美保湾内に連続的にシラスが加入していることがわかり、今後親魚資源との関係性や漁場形成メカニズム等を明らかにしていきたい。