1 事業の目的・概要
沿岸重要魚種の資源状況や効率的な漁業経営を促進するための情報発信を行うとともに、漁法の開発や単価向上対策により、沿岸漁業者の収益向上を図ることを目的とする。
細事業名 | 事業期間 | 研究の概要等 |
01沿岸漁業重要資源調査(モニタリング調査) | 平成13年度〜 |
- 調査漁具を用いた試験操業によるヒラメ、マダイ、ナガレメイタガレイ、ムシガレイ等稚魚の発生状況を把握
- 漁業者が水揚げした漁獲物(ヒラメ、マダイ、サワラ、マアジ、ウマヅラハギ、キジハタ、ソデイカ、アワビ、サザエ、バイ等)を卸売市場内等で測定する市場調査により、漁獲物組成及び放流魚の混獲状況を把握
- 従来から行っている定置網のマアジ調査を拡充し、沿岸性マアジの生活史特性(稚魚の日齢、成魚の年齢および成長、産卵期)の調査を行う。なお、稚魚の日齢査定等については公立鳥取環境大学環境学部の太田研究室との共同研究で実施
- 漁業者の漁具を用いた漁期前の試験操業による漁獲対象魚種の分布・来遊状況を把握
- 鳥取県中部地区漁業振興協議会(泊〜賀露まで)において、自主規制によるカワハギ籠の休漁期間(現在は6〜7月)を見直すにあたり、鳥取県のウマヅラハギの産卵期について正確な調査を求められたため、令和6年に産卵期の調査を行う。(新規)
- 資源動向や漁獲統計、海洋環境等から沿岸重要魚種の漁況予測を実施
※国の資源評価魚種の拡大により、調査対象魚種が大幅に増加する見込み
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02新たな資源管理に対する体制構築調査 | 令和3年度〜
令和7年度 |
- 資源評価対象魚種の拡大に対応するため、漁獲情報として「漁獲努力量(操業回数、操業位置等)」を把握する標本船調査体制を構築
- 上記の漁獲努力量、漁獲量等の生物データ、海洋観測等の環境データから漁場形成要因等を解析し、漁場の健康診断を実施
- 沿岸魚種のうち、マダイ、ヒラメ、サワラが新たにTAC対象種となる見込み。資源評価の精度向上のため魚体購入し精密測定を行い、年齢、成長、成熟について国の水産資源研究所と連携して調査を進める(国費)。調査期間は令和5〜7年度の3年程度を想定している。
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03アカモク資源の持続的利用技術研究 | 令和4年度〜
令和8年度 | アカモクの分布状況を把握するために、空中ドローンによる空撮を行う。 |
2 主な事業内容
(単位:千円)
| 細事業名 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの
変更点 |
1 | 沿岸漁業重要資源調査 | (1)稚魚発生量把握のための試験操業の実施
(2)漁獲対象魚種の分布状況を把握する漁期前試験操業の実施
(3)漁獲物組成等の把握のための市場調査の実施
(4)調査結果及び漁獲統計等からの漁況予測及び情報発信
(5)小型底曳網調査で漁獲されるマアジ稚魚から耳石を採取し、日齢査定を行い、孵化時期を推定する(鳥取環境大学太田研究室との共同研究:予算は鳥取環境大の研究費で実施)。
*マアジ成魚の精密測定については、令和4年度に十分なデータが取得できたのでサンプリングは終了。現在、論文化している。
(6)鳥取県のウマヅラハギの産卵期を調査
5〜6月(令和6年休漁期間)は、賀露の漁業者に標本の採集を委託する。6〜7月は賀露の市場にて漁獲物を買い取り、魚体の精密測定を行い生殖腺重量指数(GSI)の季節変化から産卵期を特定するとともに、雌については卵巣の組織切片を作成し、各月の成熟段階を組織学的に判定する。
・生殖腺切片作成および熟度判定
(委託料:264,000円)
・5月〜6月のウマヅラハギ採集
(委託料:66,000円) | 4,330 | 5,512 | 実態顕微鏡の備品購入費の削除
鳥取県沿岸のウマヅラハギの産卵期調査の実施 |
2 | 新たな資源管理に対する体制構築調査 | (1)標本船調査体制の継続
(2)標本船調査結果等を活用した漁場形成要因解析
(3)マダイ、ヒラメの魚体購入および精密測定
(枠外標準事務費(需用費):1,350,000円) | 2,055 | 3,289 | 令和5年度でサワラ魚体購入は終了 |
3 | アカモク資源の持続的利用技術開発 | (1)アカモクの分布調査
空中ドローンを活用し、アカモクの繁茂する時期に空中写真を撮影し、GIS上に取り込み藻場の分布図を作成する。 | 416 | 416 | |
合計 | 6,801 | 9,217 | |
3 前年度からの変更点
・ウマヅラハギの産卵期調査(新規)
・サワラの魚体購入と精密測定が終了
・令和5年度に実態顕微鏡2台を備品購入により更新済(755,700円/台×2台=1,511,400円)
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
【沿岸漁業重要資源調査】
事業目標:沿岸漁業重要資源の把握と広報
稚魚調査:泊地区12回、賀露地区6回、漁期前調査:2回
ヒラメ、カレイ類、マダイ等の稚魚の発生量調査及び県東部の小型底びき網漁とソデイカ樽流し漁の漁期前試験操業を漁船を用船して行った。
市場調査:月3〜4回
市場調査により、ヒラメ、マダイ、サワラ、マアジ、ソデイカ等の漁獲動向や資源状況の把握を実施した。近年、小型定置網の経営体数が増加したことから沿岸マアジの資源調査を拡充した。
ホームページ更新:調査の都度
モニタリング調査で得られた結果は、随時、漁業関係者団体の協議会等で報告し、資源管理、効率的な漁獲、漁業経営に役立てられている。即時性を高めるために栽培漁業センターホームページでも情報発信するなどの改善を行っている。
【新たな資源管理に関する体制構築調査】
令和4年1月から5隻(刺網3隻、小型底曳網2隻)を対象に標本船調査を継続中。漁獲努力量(CPUE)を把握することで、資源評価の精度向上に資する(国費委託事業)。
令和5年度から、TAC候補種であるマダイ、ヒラメ、サワラの魚体購入と精密測定を開始。国の研究所と連携して、魚種ごとの資源評価に必要なパラメーターの精度向上を図る(国費委託事業)。
【アカモク資源の持続的利用技術開発】
空中ドローンを活用し、アカモク藻場の分布域を把握する。
これまでの取組に対する評価
【沿岸漁業重要資源調査】
稚魚調査:泊地区12回、賀露地区6回、漁期前調査:2回
市場調査:令和4年度50日程度(複数箇所含む)
ホームページ更新:令和4年度40回程度
漁業者にとって資源や漁獲の動向は最大の関心事項であり、本調査の結果は非常にニーズが高い。市場調査の際など多くの漁業者から情報を求められる機会が多く、「操業の参考になった」等、調査継続を望む声は大きい。
【新たな資源管理に関する体制構築調査】
令和4年1月から標本船調査を5隻体制で開始し、令和5年度からマダイ、ヒラメ、サワラの魚体購入と精密測定を開始。
【アカモク資源の持続的利用技術開発】
オートパイロットによる空中ドローン撮影および編集ソフトによる写真のオルソ化技術の習得