これまでの取組と成果
これまでの取組状況
<主な取り組み>
児童相談所は、児童の最善の利益を実現することを目的として、子どもや家庭についてあらゆる相談を受ける専門機関である。
次のとおり、児童相談の種別も様々で養護相談、保健相談、障がい相談、非行相談、育成相談など児童福祉に関する各種相談に応じている。
<相談種別>
・養護相談
保護者の失踪、死亡等による育児困難児や被虐待児など環境的問題に関する相談
・保健相談
未熟児、虚弱児、小児ぜんそく、その他精神疾病も含めた疾患に関する相談
・障がい相談
肢体不自由相談、視聴覚障がい相談、言語発達障がい相談、重症心身障がい相談、知的障がい相談、自閉症相談など
・非行相談
虚言癖、浪費癖、家出、乱暴などの虞犯等相談。また、法に触れる行動をした14歳児未満児童の触法行為等相談。
・育成相談
性格行動相談、不登校相談、適性相談、しつけ相談
<児童虐待への対応と限界>
平成12年度児童虐待防止法が施行されて以降、昨今の社会問題である児童虐待に係る相談事例の対応に追われている実態がある。
このような状況を受け、平成17年度の法改正により市町村が児童相談窓口として位置づけされたことにより、今後は、市町村への援助及び介入的な関わりが必要な困難事例、一時保護や施設入所、専門的ケア等の事例への対応に役割が重点化されつつある。
<個別支援の提供>
相談活動において、個別・具体的な支援が必要と認められる場合、親や子どもの心のケアなどに取り組んでいる。
特に、虐待を受けた児童や不適切な養育環境におかれた児童は、学校で問題行動を起こしたり、集団生活になじめず他人との人間関係がうまくとれなくなったりする。このため、虐待を受けた児童には、様々な方法で相談援助活動を提供して支援している。
また、保護者に対しても、子育ての困難さや不安(虐待せざるを得なかった状況)を受けとめ、カウンセリングを行い、子育てに対する不安の軽減と虐待の再発防止に努めている。
<一時保護中の支援等>
一時保護所は、児童が安心できる環境の下、一定の規則正しい生活の中で、保育や学習、スポーツやレクリエーション等を通して、行動面の観察や生活指導を行っている。この間に、児童福祉司の面接や心理職員による心理検査、精神科医の診察なども並行して実施している。
<一時保護中の学習支援>
県内の一時保護所では、児童は義務教育年齢であっても原則学校に通わせていなかったが、この事業により各個人の学力に合わせたきめ細かな学習指導ができるようになった。
これまでの取組に対する評価
<児童虐待と相談体制>
地域における子育て力の低下や児童虐待の増加に伴い、児童相談所はこれまでの相談体制のみでの対応が困難となり、家庭相談体制の限界をもたらすこととなった。
<相談体制の役割分担>
このような状況を受け、児童相談体制の充実が図られてきており、特に、児童相談体制の充実については「児童相談に応じることを市町村の業務として法律上位置づけ、身近な市町村において虐待の未然防止・早期発見を中心に積極的な取組を求めつつ、児童相談所の役割を専門的な知識及び技術を必要とする事例への対応や市町村の後方支援に重点化することによって、児童相談に関わる主体を増やし、その役割を明確化することにより、全体として相談体制に底上げを図り、地域における児童相談体制の充実を図る」ものとされた。
<関係機関との連携>
児童虐待を始めとする複雑な問題を抱える相談に適切に対応するためには、関係機関・専門職種との連携強化が不可欠である。
困難事例に対応するために、様々な形での支援のネットワーク体制が整備されつつあるが、これまで以上に相互理解に基づく有機的な連携体制を充実させる必要がある。
今後も、児童相談所が中心となり、関係機関の相互理解に基づく実質的な連携確保をいかに形成していくか、相談体制の充実が求められている。
<一時保護所の運営>
緊急に親子分離をしたり、職権によって強制的に一時保護したりするケースが多く、子どもは不安定な状況にあり、慎重な対応を要するほか、困難を抱えた子どもが急に入所し、ほとんど情報がないまま職員が対応せざるを得ず苦慮している。また、親による子どもの取り返しや子ども同士のいじめ・暴力を防ぐための安全確保対策の充実が求められている。
一時保護所に学習支援者を派遣することによって、各個人の学力に合わせたきめ細かな学習指導ができるようになり、児童の学習意欲の向上が図れるとともに、児童の生活サイクルが一定となることで、安定した生活を送ることができるなど、児童の学習面等において好影響を与えた。