1 事業の目的・概要
自傷行為や暴力行為など行動上の課題や希死念慮などを抱える子どもたちやその親の心の健康と命を守るため、令和7年4月に鳥取大学附属病院(以下、「医大」という。)精神科内に新設される児童思春期病床内(病床数は6床)に「こどもと親の心の健康サポートチーム」(以下、「サポートチーム」という。)を設置。
- 児童相談所と医大の相談ホットラインを開設するなど医大と連携を図り、児童相談所が対応するケースや児童養護施設等に入所している子どもの対応困難事例を速やかに医療につなぐ体制を整える。
- 児童相談所をはじめとする児童福祉関係機関の困難事例等への対応力の向上(児童相談所の体制強化の一環)を図るとともに、県内の児童精神科医の確保と人材育成にも寄与する。
2 主な事業内容
(1)児童福祉現場と医療の連携体制構築
・児童相談所の対応困難事例を医療につなぐホットライン設置
・児童相談所が関与する個別事例への医大からの定期的な助言指導や事例検討の実施
・施設で生活する児童等の個別事例について、アセスメントや生活上の支援を医大から助言
・救急、警察、地域の輪番病院等の関係機関との連携強化の仕組みの構築
※サポートチームメンバーは医大精神科内の精神科医、精神保健福祉士、公認心理師、看護師
(2)人材育成
【医療】
・将来の児童精神科医や子どものこころ専門医※の臨床の場の確保
【児童相談所】
・児童相談所職員の医大での職場実習の実施による対応力の向上
(3)地域支援
・児童精神科医療からの子どもの心のケアをテーマに、地域の保護者・養育者をはじめとした住民向けの講座を開催
3 児相相談現場と医療現場の実情と課題
- 児童相談所が対応する相談事例の中には、自傷行為や周囲の人や物に対する粗暴行為、希死念慮など自死の可能性が否定できない言動を示す等、対応が難しい子どもの行動上の課題に対して、医療機関との連携が不可欠な相談事例が多くある一方、緊急的な受診や入院が必要と推測される場合でさえ、医療機関への受診調整に時間を要する事例がある。
- 令和3年8月に児童養護施設内で措置児童が自死するという重大事案が発生しており、児童精神科領域を含め専門的なケアが必要な子どもを速やかに医療へとつなぐ体制づくりは喫緊の課題である。
- 医療や心理療法等に関する専門的な知識や対応に関して、児童福祉関係機関の職員は外部機関から適切な助言指導を得られる体制が構築できていない状況があり、個別相談への対応の質の向上と合わせて、人材育成の観点から課題がある。
- 近年、児童精神科領域のケアが必要な子どもが増えているが、その対応の中心となる県内の児童精神科医は少なく、併せて、児童精神科医を志す学生は県外の専門施設に就職する傾向が強く、鳥取県で児童精神科医療に従事する人材の確保が困難な状況にある。
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