1 事業の目的・概要
中海の水産重要魚種であるスズキの漁業振興を図るため、脂がのったスズキをブランド化するために必要となる脂質データを収集するとともに、将来的に漁獲予想や最適な漁獲方法の提案ができるよう資源状況を調査する。また、中海と美保湾を回遊する水産有用種(カタクチイワシ)に着目し、美保湾を含めた中海圏での漁業振興策を検討する。
2 主な事業内容
(1)中海調査(H24〜)
・中海の造成浅場における水生生物の生息環境及び水産上重要な稚魚の出現動向を把握する。
調査項目 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの変更点 |
| 出現種の把握 | 4月〜6月期に月1回サーフネットを用いて、稚魚を採集する。 | 180千円 | 180千円 | 変更なし |
| 水産生物の生息環境の把握 | 月3回、水温、塩分、溶存酸素のデータを収集する。データロガーを用いて造成浅場内の貧酸素と水温の挙動を長期間モニタリングする。 |
・中海産スズキの脂質含有量の年変動及び資源動向を把握する。
調査項目 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの変更点 |
| 脂質含有量の年変動の把握 | 月1回、刺網や一本釣りで漁獲されたスズキの脂質含有量を調査する。
(中海のスズキは特に8〜10月に脂が乗って美味しいことを立証) | 標準事務費対応 | 標準事務費対応 | 変更なし |
| 基礎的な資源生態調査、漁獲実態調査(統計調査、市場調査、標本船調査) | 体長組成や銘柄別漁獲量等により、年齢別漁獲尾数を把握するともに、年変動のあるセイゴ(体長25cm程度まで(1歳未満)、釣り等で一部漁獲)の漁獲動向を把握し、経年の加入量を把握する。 |
(2)カタクチイワシの資源動態(H30〜)
・カタクチイワシ(主にシラス)は、美保湾における重要な魚類であるが、資源変動が大きく、これまでの知見も限られる。持続的で効率的な利用を考えるために、資源動態や漁場形成要因を検討・把握する。
調査項目 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの変更点 |
中海・美保湾
カタクチイワシの資源動態調査 | ・標本船調査や統計調査により漁場や水揚量、単価等を把握する。
・市場調査により、魚体をサンプリングし、体長や混獲等の基礎データを取得する。
・潮流、水温、塩分等と漁場との関係性を調べる。 | 240千円 | 240千円 | 変更なし |
(3)【新】すくい網によるシラス漁獲時のサイズ選別方法の開発(R8〜R9)
・すくった網内で活きたままシラスとそれ以外の魚を選別する方法を研究開発し、シラス以外の魚が混じることによる販売単価低下の防止を図る。
調査項目 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの変更点 |
| 光によるシラスを誘導する方法の検討 | ・カタクチイワシの視覚の発達状況の違いによると考えられる走行性の違いを利用して「シラス」のみを誘引する光量(LED水中灯を想定)を検討する。 | 2,610千円 | 0千円 | 新規 |
| 走行性による選別網の網目の大きさの検討(水槽実験or傭船洋上) | ・上記方法でシラスのみを誘引できない場合は、「魚の走行性」を利用し「選別網」の網目を通過する・出来ないで選別漁獲する方法を検討する。 |
(4)枠内標準事務費
項目 | 内容 | 要求額 | 前年度予算額 | 前年度からの変更点 |
| 標準事務費 | 普通旅費、その他需用費(消耗品費)、役務費(通信運搬費)、使用料及び賃借料 | 0千円 | 336千円 | 水産試験場管理運営費に集約 |
3 前年度からの変更点
新たにすくい網漁業者からのニーズが高い、シラス漁獲時のサイズ選別方法の開発を行う。
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
○事業目標・取組状況・改善点
(1)中海調査
【長期目標】造成浅場内の出現魚種等の長期的な変動把握
生物・水質調査のモニタリングを実施し、稚仔魚の出現種の経年変化及び魚類の生育環境を把握した。大崎地区造成浅場の沖合では、夏季の底層を中心に依然として貧酸素(3mg/L以下)水塊が見られている。また、造成浅場内(大崎)においても、夏場から初秋に貧酸素時間の割合が高くなる傾向にあり、魚介類が生息するには厳しい環境下にある。
【長期目標】造成浅場を利用した水産振興策の提言
市販のコンクリートブロック(下部にスペーサーを付着)を海底に設置してマハゼ等の隠れ家を創出する方法や海藻ウミトラノオを増殖させる方法に取組、令和7年3月にマニュアルを作成した。
(2)カタクチイワシの資源動態
【目標:資源動向や漁場形成要因の把握】
標本船調査、聞き取り調査や統計調査等を実施し、カタクチイワシ銘柄、シラス銘柄の漁獲量や単価等を整理した。また、漁獲されたシラスの大きさや他種の混ざり具合、大まかな漁場を把握している。
これまでの取組に対する評価
(1)中海調査
○造成浅場の生物・水質モニタリング
・稚仔魚調査では経年データが蓄積され、各年の水産重要種の発生状況が把握できている。
・造成浅場内の水質調査では、陸上から行う月3回の定点観測では、貧酸素水(3mg/L以下)は確認されないが、溶存酸素記録計による連続観測では令和3年度から貧酸素が確認されており、今後も連続観測が必要と考えられる。
○造成浅場を利用した水産振興策
・境港市がブルーカーボン推進事業の一環として中海(中浜港)でウミトラノオを用いた藻場造成実証実験(R7年度〜)を実施しており技術協力を行っている。実験は作成したマニュアルを活用しマハゼ等の隠れ家も創出している。
⇒ 令和7年5月末にコンクリートブロック上に母藻を設置し8月に幼体を確認。
(2)カタクチイワシの資源動態
・漁獲統計情報や標本船調査により漁獲実態が把握できるようになった。
・漁業者へ調査結果の報告を行い、引き続きデータを蓄積して漁況予測までして欲しいとの要望を受けた。
・5月〜11月頃にかけて美保湾内に連続的にシラスが加入していることがわかり、親魚資源との関係性や漁場形成メカニズム等の解明につなげたい。