1 概要説明 (実施年度、H17-H19年度)
牛の性別、産肉能力、遺伝病等が胚の段階で遺伝子診断により判定できれば、優良牛の生産が短期間で効率的に実施出来る。この技術の開発をはかる。
2 事業の背景・目的
牛の能力は子牛が生まれ、その能力検定を実施しなければ判定できず、長期間かつ大きなコストが掛かる。
一方、胚の段階で遺伝子を診断し、優良牛となる遺伝能力を持った胚のみを選抜し移植分娩させることにより、優良牛の生産の確立を大幅に高め、短期間に効率的に実施できる。
3 事業内容
(1)遺伝子増幅法による複数遺伝子診断技術の開発
(H17-19年度)
牛胚から少数の細胞を取り出し、胚の遺伝子全体を増幅させて、目的の遺伝子の解析をする方法により、性別、産肉能力、遺伝病等を判定する技術を開発する。新たに遺伝子増幅方法を改良した方法を検討する。
(2)判定用の牛胚細胞の作出及び胚の保存移植技術の検討 (H17−18年度)
複数の遺伝子診断に必要な胚の細胞数を検討する。また、診断済み胚の保存方法、受胎能力などを検討する。新たに判定用胚細胞を培養して増殖させる特殊培養法を試みる。
(3)複数遺伝子診断による優良牛の効率的生産
(H18−19年度)
雌牛の胚を診断し、優良牛となる遺伝能力を持った胚のみを選抜し移植分娩させることにより、優良牛を短期間・効率的に生産する。
4 これまでの結果
(1)遺伝子増幅法による複数遺伝子診断技術の開発
判定用の細胞を基本的な全遺伝子増幅法により遺伝子解析した場合、性別の判定だけは可能となった。さらに改良した遺伝子解析法により各種の判定が可能となってきている。しかし、一部の遺伝病及び長鎖塩基に依存する遺伝子の判定が出来ていない。
(2)判定用の牛胚細胞の作出及び胚の保存移植技術の検討
遺伝子診断した胚の凍結保存技術をほぼ開発し、移植試験を実施した。移植頭数12頭で6頭が受胎し、受胎率50%と良好な成績を得た。
(3)複数遺伝子診断による優良牛の効率的生産
遺伝子診断した胚で6頭の子牛が生産予定である。
5 期待される効果
遺伝子診断により、高能力な遺伝能力を保証された子牛が生産できる。また、生産される子牛は遺伝的に従来は利用が困難であった、産肉性は優良であるが遺伝病の遺伝子を持った牛からでも遺伝病のない優良牛が選抜できる。
未だ判定不能な項目もあるが、判定可能部分については、平成20年からはこの技術を用いた種雄牛候補牛の造成事業に活用する予定である。
経費の内訳
出張旅費 77 千円
試験用消耗薬品費 1,583 千円
牛の飼養経費 1,762 千円
合計 3,422 千円