概略説明
スイカ栽培で問題視されている急性萎凋症(注1)や着果不良、空洞果(注2)の発生要因を解析し、対策を確立するとともに、省力栽培技術や抑制(注3)小玉スイカで問題となっている裂皮対策技術を確立する。また、美味しいスイカを生産できる台木と新品種を検索する。
1 事業の必要性
ア 鳥取県農業の中で重要な地位を占めるスイカは、近年交配以降に萎れて枯れてしまう急性萎凋や着果不良で生産不安定となり、産地活性のために早急な解決が必要である。
イ 消費者(流通関係者含む)は「カット販売できる空洞の少ないスイカ」や「一層美味しいスイカ」を求めている。価格の向上維持を図るためにも高品質なスイカ生産が必要である。
ウ 生産安定、生産コスト削減による収益の向上が望まれているが、明確な対策技術が未確立である。
エ 事業の対象 県内のスイカ栽培面積 374ha
2 事業の内容
ア 生産安定技術の確立
・急性萎凋症総合対策技術確立
総合対策による現地実証
生育診断技術(注4)の確立、発生固定ほ場の実態調査
・雌花、雄花の着生安定による着果安定技術の確立
生育診断による草勢管理技術の確立
・抑制小玉スイカ裂皮対策試験
発生実態調査、裂皮対策技術確立
イ 消費者ニーズに応えるスイカ生産
・消費者の喜ぶ「空洞の少ないスイカ」生産技術の確立
・消費者の喜ぶ「美味しいスイカ」新品種の検索(ハウス作型、トンネル作型)
ウ 次世代型省力栽培技術の確立
一条植栽培(注5)技術の改善、局所施肥技術の確立
3 事業の効果
ア 急性萎凋症克服(10ha分出荷増(210トン、販売額32百万円増))、、安定的な着果(200トン、34百万円増)、空洞果の発生軽減による品質の向上(15百万円増)
品質安定→増収により生産者の意欲向上
イ 省力化により単位面積当たりの労働力軽減→面積増加(10ha、8百万円増)
ウ 栽培面積374ha→384ha、出荷量18千トン→19千トン、販売額28億円→29億円
4 これまでの成果
ア 生産安定技術の確立
・急性萎凋症総合対策技術確立
急性萎凋症の発生要因としてフザリウム菌等の土壌病原菌が関与しており、着果と過度の整枝(注6)により根の活性が弱まり、症状が助長されることがわかった。
ユウガオ台木では「パワーサンタ」(注7)が有望であった。
イ 消費者ニーズに応えるスイカ生産
・空洞果発生軽減技術
空洞果の発生を助長する要因は開花時の小さな子房、交配期の低温、収穫期の根の活性増大であることがわかった。
ウ 次世代型省力栽培技術の確立
一条植は慣行栽培に比べて、省力であり、果重が大きく、収量も多くなるが、着果が不安定で、空洞果が多くなる傾向があった
5 平成19年度の試験内容
ア 生産安定技術の確立
・急性萎凋症総合対策技術確立
発生ほ場の実態調査と不良要因改善による対策技術の実証を行う。
発生の可能性を予測できる生育診断技術を確立する。
・雌花、雄花の着生安定
生育診断技術と雌花・雄花の着生安定技術確立試験を行う。
・抑制小玉スイカ裂皮対策試験
現地発生実態調査による発生要因解明と対策試験を行う。
イ 消費者ニーズに応えるスイカ生産
・消費者の喜ぶ「空洞の少ないスイカ」生産技術の確立
空洞発生予測診断技術試験を行うとともに、対策試験として子房の大きい雌花生産技術、収穫期の果実肥大抑制技術確立試験を行う。
・消費者の喜ぶ「美味しいスイカ」新品種の検索
早出し品種と遅出し品種の検索
ウ 次世代型省力栽培技術の確立
一条植の問題点である空洞果発生と着果を良くするための試験を行う。
6 平成19年度の要求内訳(単位:千円)
内 訳 | 要 求 額 |
現場試験委託料 | 893 |
旅費 | 143 |
栽培資材・実験器具購入費等 | 1,707 |
通信運搬費 | 54 |
合計 | 2, 797 |
7 試験実施期間
平成16年度〜22年度
注)
1.交配後に株が萎れて、症状の激しい場合は枯死する症状
2.果実内部に隙間の入ったスイカ
3.秋収穫
4.生育の良否を診断する技術
5.スイカのハウス栽培は、通常1ハウスに2列(2条)苗を植え付ける。1条植は、1列植として管理を楽にする方法
6.スイカのつるを摘除すること
7.ユウガオの1品種