概略説明
鳥取県のイチゴは、「章姫」の作付が増えてきている。この品種は着色良好で大玉であり、収量も比較的多い。欠点は、春季に糖度が低下すること、果実が軟らかいことで、消費者や流通関係者から不評となっている。
一方楽な立ち姿勢で作業ができる栽培方法(高設栽培)が徐々に増加。平成17年は、栽培面積1.7haで取り組まれており新規のイチゴ就農者は必ず高設栽培を導入している。
そこで、高設栽培による「章姫」の食味安定と日持ち改善の技術確立を行う。また、この栽培方法は土の温度が下がりやすい特徴がある。このため、暖房が生育、収量、品質へ及ぼす影響を調査する。さらに、他県で育成された新品種の検索と特性を解明する。
1 事業の必要性
ア 「章姫」の食味安定と日持ち改善が産地から強く要望された。これらを改善することで販売力がアップできる。
イ 高設栽培は土の温度が一般栽培より低いと考えられる。土の加温やハウス内暖房が、経営的に見合うかどうかを調べてほしいという農家の声が強い。
ウ 将来的には「山陰地方に合った品種がほしい。」という声が強い。
エ 事業の対象者 イチゴ栽培面積 9ha
2 事業の内容
ア 奈良県が開発した奈良方式高設栽培による「章姫」の食味安定と日持ち改善技術確立
(ア)かん水(水やり)が食味と日持ちに及ぼす影響の解明
時期別かん水頻度、1回あたりかん水量等と食味、日持ちを検討する。
(イ)施肥(肥料を与える)が食味と日持ちに及ぼす影響の解明
最適施肥量、被覆肥料(肥料の効果がゆっくりで、長く続く肥料)利用による施肥回数の削減
(ウ)摘花(花を摘み取って花数を制限する)が食味と日持ちに及ぼす影響の解明
(エ)日持ち向上のための春季における遮熱技術の確立
イ 高設栽培におけるクラウン(葉の付け根の塊)直接加温、暖房技術の確立
(ア)電熱線利用によるクラウン直接加温法の検討
効果確認、最適加温温度
(イ)暖房が生育・収量・品質におよぼす影響と経営収支
ウ 総合組み立て実証
高設栽培による「章姫」の食味安定と日持ち改善技術確立及びクラウン直接加温、暖房技術の総合組み立て
エ 次世代品種の検索と特性解明
他県で育成された新品種の特性を解明
3 事業の効果
ア 「章姫」の食味安定と日持ち改善→単価向上(10%アップ)→イチゴ栽培農家の所得向上
イ 高設栽培におけるクラウン直接加温、暖房→収量向上、品質向上→イチゴ栽培農家の所得向上
ウ 品質、収量が優れる品種の選定 →品種の統一・高品質多収→イチゴ栽培農家の所得向上
エ イチゴ販売額増加(11.7百万円→12.5百万円以上)
4 これまでの成果
ア 次世代品種の検索と特性解明
「章姫」が最も多収で優れたが、果実品質に問題が認められた。
イ 各種高設栽培方式の検討
奈良方式は、他の方式より「章姫」の収量が多く優れた。
5 平成19年度の試験内容
ア 奈良方式高設栽培による「章姫」の食味安定と日持ち改善技術確立
(ア)施肥が食味と日持ちに及ぼす影響の解明
最適施肥量
(イ)摘花が食味と日持ちに及ぼす影響の解明
イ 高設栽培におけるクラウン直接加温、暖房技術の確立
(ア)電熱線利用によるクラウン直接加温法の検討
効果確認、最適加温温度
(イ)暖房が生育・収量・品質におよぼす影響と経営収支
ウ 次世代品種の検索と特性解明
他県で育成された新品種の特性を解明
6 平成19年度要求内訳(単位:千円)
内 訳 | 要 求 額 |
旅費 | 92 |
栽培費・実験器具購入費等 | 908 |
通信運搬費 | 4 |
賃借料 | 8 |
合計 | 1,012 |
7 試験実施期間 平成19年度〜23年度