1.事業の概要
豚凍結精液の作成及び利用については長年研究が行われているが、実用化レベルでの技術は未だ完成されていない。
この技術が実用化すれば、養豚農家の経営効率化に大きな役割を果たすことが期待できることから、技術の確立と農家への実用化を目指す。
2.事業の目的および背景
(1)県内の養豚農家は雄豚を飼養し、自然交配により子豚を生産しているが、雄豚の飼育や交配にかかる労力は非常に大きく、高齢の農家にとっては負担が大きい。
(2)労力軽減を目的に、当試験場が供給している液状精液で人工授精を行っている養豚農家が増えつつあるが、輸送中の精液の品質低下や、必要なときにすぐに精液が手に入らないなどの問題が残っているため、液状精液は自然交配の補助として利用されているのが現状である。
(3)豚凍結精液が実用化できれば、輸送中の精子の品質低下はなくなり、また、農家が凍結精液を常に保管していれば必要なときに精子を利用できるなど、今ある問題点は解消される。
(4)豚凍結精液の問題点は、受胎率が低いことや産子数が少ないことである。これは、豚の精子が温度衝撃に弱いことが原因であり、凍結や融解によって精子の活力が著しく低下してしまうためである。
(5)実用化させるためには、凍結精液の精子活力低下をできる限り少なくし、受胎率や産子数を向上させることが重要である。
3.事業の効果
(1)確実に人工授精が行えるので、養豚農家が雄豚飼養にかかる労力及びコストが削減できる。
(2)精液が常に手元にあるので、雌豚の発情に合わせて適期に交配ができる。
(3)年間を通して一定品質の精子が使えるので、豚の繁殖効率が安定する。
(4)優れた雄豚の遺伝子が半永久的に保存できるので、優秀な系統を維持しつづけることができる。
4.事業の内容
(1)これまでの成果
<H17年度まで>
1)精液の凍結に使用する耐凍剤には、「0.5モル濃度のエチレングリコール」が最適であることが判明した。
<H18年度>
1)凍結精液による交配試験(場内)を実施。
受胎率63.6%(H18.10月末現在)。
引き続き交配を実施中。
2)凍結作業にかかる時間を短縮して行ったところ、精子の生存 率が向上した。
(精子生存率:35% → 50%以上)
(2)H19年度の計画
一般に広く使用されている様々な豚人工授精用カテーテルとともに、当試験場独自にカテーテルについて検討し、受胎率及び産子数の更なる向上と実用性について検討する。
(3)年次計画
年度 | 事業内容 | 事業費
(千円) |
全 体 | 豚凍結精液の農家利用定着化 | 33,284 |
H18年度 | 1.活性剤添加による精子活性向上試験。
2.凍結精液による人工授精試験(場内)。 | 11,580 |
H19年度 | 1.実用性の高いカテーテルの検討。
2.有望なカテーテルによる人工授精試験。
(場内) | 11,476 |
H20年度 | 1.農家実証試験の実施。
2.凍結精液利用マニュアルの作成。 | 10,228 |