概略説明
鳥取県は、12月から2月に日照時間の少ない冬季寡日照地域であり、現在の品種では収量は少なく、品質も良くない。このため、新しく開発された新品種を積極的に導入して本県での特性を明らかにするとともに、省力軽労化を図るため近年導入が進んでいる高設栽培(立ち姿勢で作業ができる栽培)技術を確立する。
1 事業の成果
ア イチゴ主要品種の特性比較
鳥取県に適する品種を選定するため、品質・収量等の比較検討を行った。その結果、‘章姫’、‘紅ほっぺ’は3月に糖度の低下する点は問題であるが、収量が多く有望であることがわかった。
イ イチゴ高設栽培技術の確立
(ア)イチゴ田布施方式高設栽培法の検討
現地で田布施方式(主に波トタンと鉄パイプで作った安価な高設栽培方式)の高設栽培が取り組まれているが収量が安定しないため、培地(人工的に作成した土)組成、施肥量等について検討した。
田布施方式での、培地組成は粉砕籾殻5、ピートモス3、堆肥2の体積割合が良く、窒素量は、標準の1.5倍が生育が優れ、収量も多く良好であるとことがわかった。標準の2.0倍は施肥量が多過ぎるため、初年目にチップバーン(葉先の枯死)等生育障害が発生することがわかった。
(イ)イチゴの各種高設栽培方式の検討
各種の高設栽培が発表されているので、その中から鳥取県に適した栽培方式を検討した。
‘章姫’については、奈良方式が、糖度、硬度、収量が多く優れた。‘とよのか’については、アグリス方式が、奈良、福山方式と同等に収量が多く、糖度も高く、硬度も硬く優れた。
(ウ)かん水技術の確立
鳥取県で有望と考えられる奈良方式高設栽培法で、本県に適した水管理技術を検討した。
培地が乾燥しpF1.5の土壌水分になったときに自動でかん水する方法は、タイマーで 定期的にかん水する方法に比べかん水量は少なくて済むが、生育、収量ともに劣ることがわかった。
2 残された課題
ア イチゴ主要品種の特性比較
今後、他県で開発される新たな品種については、鳥取県での適正を継続して検討する必要がある。
イ イチゴ高設栽培技術の確立
県内で栽培の増加している‘章姫’は春期に糖度が低下したり、果実が軟らかく日持ちしない問題がある。これに対応した高設栽培法の施肥やかん水法等の改善。高設栽培の培地の加温や暖房方法についての検討。