概略説明
難防除病害であるナシの白紋羽病および白ネギのウイルス病に対し抵抗性を示す新系統を開発する。
1 事業の必要性
ア ナシ台木:
・ナシの老木園を改植して新品種に更新する際、白紋羽病による苗木の枯死が多発して問題となっており、抵抗性台木の開発が求められている(対象:県内ナシ栽培農家4,000戸)。
イ 白ネギ:
・白ネギのウイルスフリー化した種苗は旺盛な生育を示すが、3年前後の栽培期間内にウイルスに再感染することが多く、普及が進展していない。そこで、ウイルスに強い性質を持った素材の開発が望まれている(対象:県内白ネギ栽培農家2,760戸)。
2 事業の内容
ア ナシ台木:
・各種野生ナシを交雑した実生苗を多数育成し、それらの根に白紋羽病菌を接種し、耐性を示す個体を選抜する。
・各種植物病害で植物に抵抗性を与える遺伝子(キチナーゼ生成遺伝子など)を導入した台木を開発し、特性を解析する。
イ 白ネギ:
・これまでの基礎研究で開発した抵抗性遺伝子(ウイルス外皮蛋白質遺伝子)を導入した白ネギの特性を解析する。
3 事業の効果
ア ナシ台木:
白紋羽病抵抗性ナシ台木の育成 → ナシ新品種の改植が促進 → 県内ナシ産地の活性化
イ 白ネギ:
ウイルス抵抗性白ネギの育成 → 減農薬栽培、高品質・低コスト栽培が可能
4 これまでの成果
ア ナシ台木:
・ナシ野生種の交雑実生集団(1,140個体)の中から、白紋羽病菌接種による第1〜3次接種を行い、計2系統の耐性個体を選抜した。
・ナシ優良台木を実験素材として、遺伝子導入実験における1)アグロバクテリウムの感染条件の検討、および2)培養組織からの植物体再生条件の検討を行い、基礎データを収集した。
イ 白ネギ:
・ウイルス抵抗性を与える遺伝子を単離し、その構造を解析した。
・上記の遺伝子をネギに導入し、6系統の新素材を獲得した。
・これらのネギは隔離温室内で栽培し、特性を調査している。
5 H18年度の試験内容
ア ナシ台木:
・ナシ野生種の交雑実生集団から選抜した2系統について、ほ場での耐病性の実証試験を行う。また、選抜した各系統のクローン増殖を行い、それらの病害耐性について詳細なデータを得る。
・現地試験を行うため、耐性系統を増殖し、ナシ新品種を接ぎ木した台木を育成する。
・ナシ台木に抵抗性を与える遺伝子を導入するための基礎条件を検討するとともに、遺伝子を導入した台木を隔離温室内で栽培し、特性を調査する。
イ 白ネギ:
・ 抵抗性遺伝子を組み込んだネギのウイルス抵抗性等の特性を評価する。
6 H18年度要求額の内訳
内 訳 | 要求額 |
会議、学会等への出張費 | 207 |
栽培管理費(農業資材、農薬、燃料等) | 480 |
組織培養費(培養器具、消耗品、試薬等) | 620 |
光熱水費、印刷製本費、通信運搬費等 | 507 |
合 計 | 1,814 |
廃止理由
遺伝子組み換え試験を中止し、白紋羽病耐性台木の選抜育成試験を新規事業「バイテクによるナシ新品種シリーズ」の中で継続実施する。