1 現状・課題
世界的な穀物価格の高騰の中で、燃油や肥料をはじめとする営農資材等が大幅に値上がりし、農業の収益性の悪化が懸念される。この高騰が農業経営を逼迫させることがないよう持続可能な農業を営めるようにすることが緊急の課題となっている。
農林水産部では、「穀物・飼料・資材・燃油高騰に対応する農業緊急プロジェクト」の中で「農林産物生産コスト縮減対策プロジェクト」において、検討を進めている。
○肥料成分値上がり程度 りん酸:3倍(前年比)
窒素、カリ:2倍(前年比)
○肥料費の高騰 (単位:円/10a)
作 物 名 | 高 騰 前
(6/30まで) | 高 騰 後
(7/1以降) | 差 額 | 上 昇 率
(%) |
水 稲 | 10,004 | 14,547 | 4,543 | 45 |
二十世紀梨 | 32,470 | 39,883 | 7,413 | 23 |
白 ね ぎ | 41,872 | 55,642 | 13,770 | 33 |
す い か | 23,788 | 34,237 | 10,449 | 44 |
らっきょう | 48,534 | 66,299 | 17,765 | 37 |
ブロッコリー | 37,698 | 48,037 | 10,339 | 27 |
2 事業の考え方
農業資材の高騰に伴う農作物の生産コストを縮減するためには、以下の取組を行う。
3 取組の概要
○検討会・研修会の開催
→JA営農指導員や各作物生産部、試験研究機関、行政関
係者との情報交換や農家負担の軽減に向けた対策を検
討。
○JAにおける土壌分析体制の整備
→県下JAに土壌分析機器10台設置し、JAにおける土壌分 析体制の整備を行い、科学的データに基づく肥料の施用に
転換し、肥料コストの低減を図る。
○生産コスト縮減展示ほの設置
→農家が過去に経験のない施肥量の削減や新しい肥料を使 用する場合、地域の土壌や気象条件に合わない等により、
品質や収量に影響が出ることに対する農家の不安を解消
するため、展示ほを設置。
20年度:野菜・果樹 県下30カ所
21年度:水稲・野菜・果樹 県下65カ所
○肥料削減後の土壌の状態のモニタリング
土壌保全対策技術確立事業(農試)
○化学肥料と代替可能な堆肥製造
化学肥料の代替可能な高濃度窒素・リン酸堆肥の製造技
術及びその施用方法の検討(中小家畜試)
○PRパンフレット作成
→土壌分析の推進や施肥削減技術のPRパンフレットを作
成し、JA機関誌に挿入。
4 期待される効果
(1)土壌分析器の導入
例:水稲のりん酸の施用
土 壌 分 析 結 果 | プロジェクトにおける
施肥設計の提案 | 施肥用(kg/10a) |
改良材 | 肥料 |
30mg以上
/100g |
過剰 | 土壌改良資材、施肥りん酸ともに無施用 | 0 | 0 |
10〜30mg
/100g |
適正 | 施肥りん酸のみ施用 | 0 | 5〜7 |
10mg未満
/100g |
不足 | 土壌改良資材、施肥りん酸とも施用 | 7 | 5〜7 |
注)土壌改良材は苦土重焼燐
(2)展示ほ設置
省施肥型 → 収量・品質の → 省施肥型 → 肥料コストの
展示ほ設置 確 認 栽培の拡大 低 減
(3)農家の施肥に対する意識の改革
経験ではなく、科学的根拠に基づいた施肥を行う農家意識の改革
→低コスト技術の栽培基準への反映
○ 水稲
安価な代替肥料による肥料設計を行い、土壌診断によるP・K削減→ 標準設計のコストは高騰前の水準
○ 果樹
展示ほによる実証を行いながら、H22を目途に施肥設計を見直す方針
○ 野菜
らっきょう、ブロッコリー、白ねぎなど、JA各生産部と普及所が中心になって安価な肥料への代替えを中心とした肥料設計