1 事業目的
県内で大規模災害が発生した場合、東日本大震災や関東東北豪雨などの事例が示すとおり住民自ら避難所開設運営することが必要となる。
しかし、各市町村において、
1)避難所運営のノウハウが不足していること
2)住民主体の「避難所運営要領」(以下「要領」という)が未策定であること
3)住民自ら避難所開設運営を行う意識の醸成不足であること
4)災害時に避難所の運営を担うべき避難所運営リーダーの育成が進んでいないこと
から、住民主体の避難所開設運営を実施できないおそれがある。
そこで、市町村内に避難所運営リーダーを増やすことで、県内の避難所対策の向上に繋げる。
2 事業内容
(1)住民主体の避難所運営指針作成(以下、「指針」という)
各市町村における避難所開設運営要領の作成を促進するため、地域住民主体で避難所運営を行うためのポイントなどを取りまとめた指針(ひな形)を県、市町村で共同作成(防災対策研究会の議題として取り組む)
指針を元に各市町村は住民向けの要領(マニュアル)を作成
(2)市町村職員向けのリーダー養成者育成研修(講座及び訓練)を開催し、市町村職員の避難所運営リーダー養成能力の向上を図る。
1)リーダー養成者講座
ア 住民自らが避難所開設運営を実施する必要性について
イ 避難所運営リーダーの養成に必要な知識について
※多様な主体(特に女性、外国人)にも配慮した避難所開設や運営手法などの知識
ウ 市町村職員が避難所運営リーダー(地域住民)養成に使用する教材の作成 など
※県内3ヶ所で実施。(自主防災組織のリーダー、防災士も参加し、地域で取り組む環境を醸成する)
2)避難所開設運営訓練
市町村職員向けに避難所開設運営訓練を実施し、避難所開設運営に関する実技及び、避難所運営リーダー(地域住民)を養成するためのスキル習得を図る。
併せて、避難所開設運営訓練を通じて、指針の課題、問題点などを専門家、自主防災組織のリーダー、市町村職員、県職員で抽出・検証し、検証結果を指針に反映する。
※県内9市郡部を3ヶ所×3ヶ年で実施する。なお、実施市町村以外の市町村職員、リーダー候補者(自主防災組織のリーダー、防災士等)も参加し、良かった点、見直すべき点など客観的な意見を出し、スキルアップと指針の改善を図るとともに、実施市町村以外の市町村の職員のスキルアップと避難所運営リーダー養成の素地醸成を図る
(3)避難所運営リーダー候補者(地域住民)向けの事前研修を実施
次年度以降の避難所運営リーダー養成講座に先立ち、避難所運営リーダー候補者(地域住民)に対し自ら避難所開設運営を行う必要性の意識啓発研修を実施する。
※(2)の市町村職員向けのリーダー養成者講座の一部を活用
3 市町村の主体的な事業継続に向けた取組み(案)
(1)鳥取県防災対策研究会で、今後の進め方について市町村と合意形成を図る。
(2)県・市町村の共同作業部会を実施し、指針を作成する。指針を元に各市町村は要領(案)の作成を実施する。(作成した要領について意見交換会を開催する等によって市町村の主体的な取組みを図る)
(3)県内3ヶ所で市町村職員向けのリーダー養成者育成研修を開催し、市町村職員の避難所運営リーダー養成実技の習得を図る。(注)訓練のみ3ヶ年継続して、全市町村での取組みとする。
(4)県内3ヶ所で避難所運営リーダー(地域住民)の事前研修を開催し、避難所運営リーダーへの意識啓発を図る。
(5)市町村のリーダー養成者は住民向け避難所開設運営訓練を実施し、要領(案)の修正、完成を図る。
(6)市町村のリーダー養成者は新たな養成者の育成を実施する。
(7)要領は避難所開設運営訓練を通じてPDCA(市町村のリーダー養成者による座学、訓練等)を実施し、最新の考え方の反映を図る。
(8)県は(5)〜(7)について、鳥取県防災対策研究会等で報告や共同研究の対象とするとともに、毎年要領の見直し、進捗状況を調査し、市町村の主体的な取組みの確認と改善促進をする。
※以下(6)〜(8)のサイクルを継続
4 全体スケジュール
本事業は、3年程度を費して年次的に実施する。
H28年度 | H29年度 | H30年度〜 |
・指針の作成 | ・要領(案)の作成 | ・要領の修正 |
・市町村職員向けのリーダー養成者講座(3ヶ所) | − | − |
・市町村職員向けの避難所開設運営訓練(3市郡部) | ・市町村職員向けの避難所開設運営訓練(3市郡部) | ・市町村職員向けの避難所開設運営訓練(3市郡部) |
・避難所運営リーダー候補者(地域住民)への事前研修 | ・避難所運営リーダー(地域住民)の養成講座の開始(市町村職員などによる説明) | ・避難所運営リーダー(地域住民)の養成講座 |
5 効果
○市町村職員をリーダー養成者として育成することで、市町村が主体的かつ継続的にリーダー育成に取り組むことができる。
○外部の説明者よりも市町村職員が説明者となることで、避難所運営は地域の住民主体で行うという意識を広く普及させることができ、地域の防災力向上ともに、安心・安全なまちづくりに資することができる。
6 H28年度所要経費
(1)住民主体の避難所運営指針作成
※標準事務費対応
(2)市町村職員向けのリーダー養成者育成研修
1)リーダー養成者講座
講師謝金@30,000円×2人×3ヶ所=180千円
講師旅費@70,000円×2人×3ヶ所=420千円
2)避難所開設運営訓練
講師謝金@24,000円×2人×3市郡部=144千円
講師旅費@70,000円×2人×3市郡部=420千円
(3)避難所運営リーダー候補者(地域住民)向けの事前研修
※再掲((2)1)リーダー養成者講座を利用)
合計1,164千円
これまでの取組と成果
これまでの取組状況
・避難所運営は、避難所の自治的な運営に移行することが、避難者の自立に向けた一歩になるが、鳥取県において、近年では避難所開設を伴う災害があまり発生していないため、県・市町村ともにノウハウが不足している状況。
これまでの取組に対する評価
・鳥取県では避難所運営基準の参考となる要領等を作成(※)し、市町村へ提示してきたが、東日本大震災の教訓や女性参画への配慮などを踏まえたものが反映されていない。
※「鳥取県避難所機能・運営基準」(H19.2、鳥取県防災対策研究会)
「避難所運営マニュアル(鳥取県標準モデル)」(H23.6、県福祉保健課通知